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ノイズフィルタの漏れ電流の計算方法

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この記事では、単相と三相それぞれの漏れ電流の計算方法について解説します。

漏れ電流の算出方法

ノイズフィルタの漏れ電流は、回路が正常な状態でも常に流れています。

その理由は、Yコンデンサには商用電源の電圧が常時かかり、その電圧に応じた容量性の電流がアースへと流れるためです。

この漏れ電流は、Yコンデンサの静電容量と印加電圧から計算できます。

I=2πfCVI=2\pi fCV
  • II[A]:漏れ電流の実効値

  • ff[Hz]:商用周波数

  • CC[F]:Yコンデンサの静電容量

  • VV[V]:印加電圧の実効値

この式はコンデンサのインピーダンス 1/(2πfC)1/(2\pi fC) に印加電圧を当てはめたもので、コンデンサの性質そのものです。

そして単相用ノイズフィルタには、Yコンデンサが L-GND 間と N-GND 間に 1 個ずつ接続されます。

このうち N 側は接地されていて、N-GND 間に電位差が生じないため漏れ電流はほとんど流れません。一方で L 側は接地されていないため、Yコンデンサの静電容量に応じた漏れ電流が L-GND 間に流れます(図1)。

図1 単相フィルタのYコンデンサと漏れ電流の経路

図1 単相フィルタのYコンデンサと漏れ電流の経路

単相の漏れ電流の計算例

ここで実際に数値を入れて計算してみます。Yコンデンサの静電容量を 2200pF とし、同じフィルタを両方の地域で使う場合を想定して、電源条件は日本と欧州の 2 つで比較します。

  • 共通条件:C=2200pFC=2200\mathrm{pF}

  • 日本:100V/50Hz100\mathrm{V}\text{/}50\mathrm{Hz}

  • 欧州:230V/50Hz230\mathrm{V}\text{/}50\mathrm{Hz}

日本の電源条件においては、漏れ電流が約 69μA となります。

IJP=2π×50×2200×10−12×100=69 μAI_{JP}=2\pi\times50\times2200\times{10}^{-12}\times100=69\,\mu\mathrm{A}

欧州の電源条件では、電圧が高い分だけ漏れ電流が大きくなり約 159μA が流れます。

IEU=2π×50×2200×10−12×230=159 μAI_{EU}=2\pi\times50\times2200\times{10}^{-12}\times230=159\,\mu\mathrm{A}

このように同じノイズフィルタでも、印加電圧が高い地域では漏れ電流が 2 倍以上に大きくなることがわかります。グローバル対応のノイズフィルタではこれらの傾向を踏まえて、Yコンデンサの静電容量に制限を設けています。

結線方式による漏れ電流の違い

三相用のノイズフィルタにおいても、漏れ電流を算出する方法は単相と同じです。ただし式に入れる電圧が、電源電圧そのものではなくなります。

三相用ノイズフィルタの漏れ電流は、中性点とアース間の電位差 VnmV_{nm} をもとに算出します。

I=2πfCVnmI=2\pi fCV_{nm}

この VnmV_{nm} の大きさは、三相の結線方式によって変化します。

スター結線の場合

スター結線では、中性点を直接アースへ接続することが一般的です。このとき中性点とアースは、理想的には同電位となります。

つまり VnmV_{nm} が 0V で漏れ電流が流れないため、ノイズ対策のためにYコンデンサの静電容量を大きくすることができます。

ただしこれは理想状態での挙動で、実際の三相交流電源では、各相電圧の振幅差・位相差・Yコンデンサの静電容量のばらつきなどの影響によって中性点に若干の電圧が生じ、その分の漏れ電流が流れます。

デルタ結線の場合

デルタ結線には、スター結線のような中性点に相当する点がありません。そのため、いずれかの端子を接地することになります。

ここで接地された端子は相電圧が 0V となり、これによってYコンデンサに流れる電流が三相で打ち消し合わなくなります。これは中性点とアース間の電位差 VnmV_{nm} が上昇したことと等価です。

図2 デルタ結線とスター結線の漏れ電流の流れ方

図2 デルタ結線とスター結線の漏れ電流の流れ方

そしてこの VnmV_{nm} は線間電圧そのものではなく、それを 3\sqrt{3} で割った大きさになります(図2)。

Vnm=VLL3≒0.577×VLLV_{nm}=\frac{V_{LL}}{\sqrt{3}}\fallingdotseq0.577\times V_{LL}

デルタ結線の漏れ電流の計算例

日本の三相電源の条件をもとに漏れ電流を計算してみます。

  • 静電容量:C=2200pFC=2200\mathrm{pF}

  • 周波数:f=50Hzf=50\mathrm{Hz}

  • 線間電圧:VLL=200VV_{LL}=200\mathrm{V}(デルタ結線)

  • 中性点とアース間の電位差:Vnm=200/3≒115VV_{nm}=200\text{/}\sqrt{3}\fallingdotseq115\mathrm{V}

この電源条件において、漏れ電流は約 79μA となります。

I=2π×50×2200×10−12×115=79 μAI=2\pi\times50\times2200\times{10}^{-12}\times115=79\,\mu\mathrm{A}

VnmV_{nm} がほぼ 0V のスター結線と比べると、同じ静電容量でも漏れ電流が大きくなります。つまりデルタ結線では、接地によって崩れた相間のバランスがそのまま漏れ電流として現れるということです。

そのためデルタ結線向けのノイズフィルタでは、スター結線向けほど Yコンデンサの静電容量を大きくできません。

Yコンデンサの容量上限

ノイズフィルタを選ぶときに、データシートの漏れ電流値だけを見て判断してしまうことがあります。しかしその値は、メーカーが想定した電源条件での値です。

使用する電源条件が異なれば、それに付随して漏れ電流の値も変化します。そのため電源条件をもとに Yコンデンサの静電容量の上限値を見積もる必要があります。

C=I2πfVC=\frac{I}{2\pi fV}

上式の II に漏れ電流の許容値を代入すると、Yコンデンサの静電容量の上限値が求まります。

単相における静電容量の計算例

ここでは IEC 62368-1 を基準にして、許容値を 0.5mA として計算してみます。

  • 漏れ電流:I=0.5mAI=0.5\mathrm{mA}

  • 周波数:f=50Hzf=50\mathrm{Hz}

日本の単相 100V では、静電容量の上限は約 15900pF となります。

CJP=0.5×10−32π×50×100=15900 pFC_{JP}=\frac{0.5\times{10}^{-3}}{2\pi\times50\times100}=15900\,\mathrm{pF}

欧州の単相 230V では、静電容量の上限が約 6920pF です。

CEU=0.5×10−32π×50×230=6920 pFC_{EU}=\frac{0.5\times{10}^{-3}}{2\pi\times50\times230}=6920\,\mathrm{pF}

実際にはここに電源電圧や周波数の変動、さらに静電容量のばらつきが加わるため、より安全に見て 4700pF 程度が実用上の上限となります。

三相における静電容量の計算例

三相では VV に線間電圧ではなく、中性点とアース間の電位差 VnmV_{nm} を代入します。日本のデルタ結線の三相 200V では、 VnmV_{nm} が約 115V となります。

この電源条件におけるYコンデンサの静電容量の上限は約 13800pF です。

C3P=0.5×10−32π×50×115=13800 pFC_{3P}=\frac{0.5\times{10}^{-3}}{2\pi\times50\times115}=13800\,\mathrm{pF}

ここまで見てきたように漏れ電流の許容値が同じでも、電源条件によって使えるYコンデンサの静電容量は 2 倍以上変わります。

表1 電源条件ごとのYコンデンサ容量上限

表1 電源条件ごとのYコンデンサ容量上限

計算結果の使いどころ

この静電容量の上限は、設置環境の電源条件に当てはめて初めて意味を持ちます。

たとえば日本の三相交流電源では、結線方式に注意が必要です。アメリカやヨーロッパをはじめとして多くの国がスター結線であるのに対して、日本ではデルタ結線が主流です。

そこでスター結線向けのノイズフィルタを日本の電源系統に接続すると、Yコンデンサの静電容量が大きいため漏れ電流によるトラブルを引き起こすことがあります。そのため日本の三相交流電源でノイズフィルタを使用する場合には、デルタ結線向けのノイズフィルタを選択しておくのが無難です。

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