この記事では、シールドケーブルの選び方と接地方法について解説します。
シールドの種類と違い
シールドケーブルの性能は、シールド層の構成によって段階的に変化します。
シールド効果の目安としては、ローエンドの RG-58 が 50 dB 程度、ミドルエンドの RG-223 で 80 dB 程度、ハイエンドの LMR-400 で 90 dB 以上となっています。

図1 編組シールドとアルミ箔シールドの構造
シールドケーブルのシールド層は編組線やアルミ箔単独、または両者の組み合わせによって構成されます。編組線によるシールド層は網目に隙間が生じるのに対して、アルミ箔によるシールド層は隙間のない連続した層を構成します。
各シールド層の特徴の違い
編組線は金属の素線を格子状に編んだ構造で、被覆率は 70〜95 % となります。構造上、必ず隙間が生じ、そこから電磁界が漏れるため、周波数が高くなるとシールド効果は低下します。一方で屈曲性が高く、耐久性にも優れます。
アルミ箔は樹脂テープに箔を貼って巻き付けた構造で、被覆率は 100 % です。高周波まで電磁波が漏れにくく軽量ですが、繰り返し屈曲すると箔が破断するため耐久性に難があります。
高いシールド効果が要求される場面では、箔と編組を重ねた二重シールドが使用されます。さらに高いシールドが必要となる用途では、箔・編組・箔を重ねた三重シールドも使用されます。
シールド効果の規定方法
シールド効果の規定方法には、ケーブルそのもののシールド効果を測定する伝達インピーダンス法と、150 mm 角のシート状のシールド材のシールド効果を測定する KEC 法の 2 つがあります。
伝達インピーダンス法とは

図2 伝達インピーダンスが表すもの
伝達インピーダンス法は、シールドに流れる電流 I と、その電流がシールドの内側に生じさせる電圧 V との比からシールド効果を算出する方法です。
伝達インピーダンスは単位長さあたり mΩ/m で表し、値が小さいほどシールド効果が高いことを意味します。
伝達インピーダンス法は IEC 62153-4-3 で規定されており、欧州の EMC 規格に準拠した産業用制御ケーブルや Cat 7 のツイストペアなどに適用されています。
ちなみに、高周波同軸ケーブルのデータシートには伝達インピーダンスが記載されていないことがほとんどで、dB で表すシールド効果が規定されています。この dB 表記されたシールド効果と伝達インピーダンスの関係は以下のようになります。
ここで がシールド効果(dB)、 はケーブルの特性インピーダンス、 はシールドの外側の回路のインピーダンス(規格では 150 Ω)、 はケーブルの長さです。なお、この式が成り立つのは、ケーブルが波長に比べて十分に短いときに限ります。
KEC 法とは
KEC 法では、近傍界の電界と磁界に対して別々の治具を使ってシールド効果を測定します。150 mm 角のシート状のシールド材を試料とし、治具に隙間なく挟んで固定します。
配線の束を後から覆うシールドチューブのデータシートには、KEC 法によるシールド効果が掲載されています。KEC 法の周波数範囲は 100 kHz〜1 GHz ですが、治具を変更することで 1 GHz 以上を測定することも可能です。
KEC 法は日本の KEC(関西電子工業振興センター)によって開発された試験法であるため、日本では一般的ですが、海外では ASTM 法などの別の試験法が使用されます。
シールド効果の違い
同じシールド材でも、測定方法によってシールド効果の値は変化します。この理由は、試験方法によって、試料の形や測定する電磁界の性質、波動インピーダンスが異なるためです。
特に KEC 法や ASTM 法は、シールドケーブルのシールド効果として適用するには注意が必要で、チューブとして巻いたときの継ぎ目や端の影響は含まれません。
また実際のシールドケーブルでは、終端形状や接地方法によってもシールド効果が変化するため、KEC 法でのシールド効果がそのままシールドケーブルのシールド効果にはならない、ということは理解しておくべきです。
シールドケーブルの接地方法
シールドケーブルのシールド効果は、終端形状と接地方法によって変化します。高周波ノイズのシールドを目的とする場合は、シールドの端を 360°接続し、シールド層を両端で接地します。
終端形状
シールド層の代表的な終端形状には、360°接続とピッグテールの 2 種類が存在します。

図3 360°接続とピッグテール接続
ここで 360°接続はシールド層が全周にわたって連続的につながっているのに対して、ピッグテールは撚った 1 本の線に電流が集中することがわかります。
ピッグテールは、撚った線のインダクタンスが高い周波数で大きなインピーダンスになり、そこに電流が集中することでコモンモード電圧が発生し、それによってシールド効果が低下することがあります。
実際にシールド効果の観点で見ると 360°接続は、数 MHz 以上の周波数でピッグテールより 35 dB 以上高くなります。これはピッグテールによって、シールド層そのものの性能に関係なくシールド効果が失われることを意味します。
接地方法
シールド層の適切な接地方法は、周波数によって決まります。
ケーブル長が波長の 20 分の 1 を超える周波数では、ケーブルを集中定数の回路として扱えなくなり、終端のインダクタンスや不連続な箇所がシールド効果に影響を与えます。そのため、これらの周波数領域では両端接地が基本となります。
一方で 2 つの接地間に電位差があり、かつケーブル長が波長の 20 分の 1 に収まる(周波数の目安 1 MHz 未満)ときは片端接地を採用することがあります。これは、商用電源周波数などの低い周波数でシールド層に流れる循環電流を遮断することが目的となります。片端接地でも電界に対するシールド効果は保たれますが、磁界に対するシールド効果は両端接地に比べて低下します。
このことから、シールドケーブルで適切なシールド効果が得られない場合は、高いグレードのケーブルに交換する前に、終端や接地方法について見直すことが重要になります。
シールドケーブルの選び方
シールドケーブルの選定手順は、周波数範囲、シールド効果、屈曲性と重量、接地方法の 4 ステップで進めます。

図4 シールドケーブルを選ぶ 4 ステップの手順
1 ステップ目では、対策の対象とするノイズ源の周波数帯域を決めます。判断の境界は 100 kHz と 1 MHz です。この境界より低い帯域では磁界結合や循環電流、高い帯域では開口部からの漏洩が問題になりやすいです。
2 ステップ目では、要求するシールド効果から構造を選択します。シールド効果の目安は一重シールドで 50 dB 程度、二重シールドで 80 dB 程度、三重シールドで 90 dB 以上です。
表1 シールド効果によるグレードと代表例

3 ステップ目では、屈曲性と重量を確認します。ケーブル配線時に摺動部を通る場合は編組を選び、重量を重視する場合はアルミ箔のものを選択します。
4 ステップ目では、接地方法を決めます。高い周波数のノイズを抑えるときは 360°接続します。一方で、低周波ノイズや施工性を重視する場合は、ドレインワイヤ(箔に接触させた裸線)を使用してピッグテール接続します。










