SIGLENT (シグレント)スペクトル&ベクトル・ネットワーク・アナライザ SVA1000Xシリーズ

アンプの周波数特性を伸ばす技術であるピーキングは、高域周波数帯でアンプのゲインを意図的に持ち上げることで、帯域幅を拡大し、高域特性を改善する手法です。具体的には、アンプの負帰還回路に特定のリアクタンス素子(コンデンサやインダクタ)を付加することで、高周波域での負帰還量を減少させ、高域のゲインをわずかに増加させます。


 

ピーキングの種類と動作原理

 

ピーキングには、主に以下の2つの方法があります。

 

1. 負帰還にコンデンサを追加する

 

これは最も一般的なピーキング技術です。アンプの負帰還抵抗と並列に小さなコンデンサを接続します。高周波になるにつれて、このコンデンサのインピーダンスは低下し、負帰還量が減少します。その結果、アンプのゲインが上昇し、高域周波数特性が改善されます。この手法は、位相補償と組み合わせて使用されることも多く、高域での安定性を維持しながら帯域幅を広げることができます。

 

2. エミッタ(ソース)にインダクタを追加する

 

バイポーラトランジスタのエミッタ、またはFETのソースに小さなインダクタを直列に接続します。高周波域では、インダクタのインピーダンスが増加するため、エミッタ(ソース)の抵抗が有効的に増加し、アンプのゲインが高まります。この手法は、特に高周波回路で利用されることがあります。


 

ピーキングのメリットとデメリット

 

ピーキング技術は、アンプの周波数特性を改善する上で有効ですが、以下のようなメリットとデメリットがあります。

 

メリット

 

  • 帯域幅の拡大: 高域周波数応答を改善し、アンプの帯域幅を広げることができます。

  • 高速応答: 高周波特性が向上するため、アンプの立ち上がり時間や応答速度が速くなります。

 

デメリット

 

  • リンギングとオーバーシュート: ゲインを意図的に持ち上げるため、ステップ応答にリンギング(振動)やオーバーシュートが発生しやすくなります。

  • 位相特性の乱れ: ゲインを持ち上げた周波数範囲では位相特性(群遅延特性)が乱れることがあります。
  • 不安定性のリスク: 過度なピーキングはアンプの位相余裕を減少させ、発振などの不安定性を引き起こす可能性があります。

  • 設計の難易度: 適切なピーキング量を設定するためには、アンプの回路特性を詳細に理解し、慎重な設計が求められます。

これらのことから、ピーキングは、周波数特性の改善と安定性のトレードオフを考慮して、最適なバランスを見つけることが重要です。

 

ガウシャン特性ではないフラットな周波数特性を持つオシロスコープでは、注意が必要です。

 

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