SIGLENT(シグレント) リアルタイム・スペクトラム・アナライザ SSA3000X-Rシリーズ

スペクトラム拡散クロック(SSC: Spread Spectrum Clock)は、電子機器のEMC(電磁両立性)対策として有効な技術の一つです。デジタル回路の高速化に伴い、クロック信号とその高調波が大きなEMI(電磁妨害)の原因となるため、これを低減するために利用されます。

 

スペクトラム拡散クロックの仕組み

 

通常のクロック信号は、単一の周波数にエネルギーが集中しています。そのため、その周波数とその高調波において、強い電磁波が発生し、他の機器に影響を与えたり、EMI規制値を超えてしまったりする可能性があります。

スペクトラム拡散クロックは、このクロックの周波数を意図的にわずかに変動させることで、エネルギーを広い周波数帯域に拡散させます。これにより、特定の周波数に集中するエネルギーのピークが下がり、EMIのピーク値を効果的に抑制することができます。

 

EMC対策への応用

 

スペクトラム拡散クロックは、特に以下の点でEMC対策に貢献します。

  • EMIの低減: 特定の周波数におけるノイズエネルギーのピークを抑えることで、電磁放射を低減します。これにより、シールド材の削減や、回路設計の簡素化が可能になります。

  • ジッターと変調: 周波数変調の方式や変調率を適切に選択することで、EMI低減効果とジッター(クロック信号の周期的な揺らぎ)の発生量を両立させることができます。一般的に、変調度が深いほどEMI低減効果は大きくなりますが、ジッターも増加する傾向があります。

  • アナログ回路への影響: マイクロプロセッサやデータクロックは、大きな周波数変化には耐えられないため、一般的には数パーセント程度の小さな変調が適用されます。

 

その他のEMC対策手法との比較

 

スペクトラム拡散クロックは、他のEMC対策手法と比較して、以下のようなメリットがあります。

  • 源流対策: ノイズの発生源であるクロックそのものに手を加えるため、本質的な対策となります。

  • 部品点数の削減: シールドやフィルタなど、後から追加する部品の数を減らすことができます。

  • 小型化: 部品の削減により、機器の小型化に貢献します。

 

注意点

 

スペクトラム拡散クロックは非常に有効な技術ですが、以下の点に注意が必要です。

  • ジッターの発生: 周波数を変動させるため、ジッターが発生します。ジッターに敏感な回路(高速通信インターフェースなど)では、その影響を考慮した設計が必要です。

  • 変調方式: 変調の波形(三角波、鋸歯状波など)や変調率によって、EMI低減効果やジッターの特性が異なります。適切な方式の選択が重要です。

スペクトラム拡散クロックは、EMC対策として非常に有効な手段であり、多くの電子機器で採用されています。しかし、その特性を理解し、機器の要件に合わせて適切に利用することが重要です。

 

 

参考:

「初めてのスペアナによるEMIノイズ対策」 スペアナによるEMIノイズ測定の手順書を差し上げています。

  • 全82ページの図解による手順書
  • 普段スペアナを使用しない方向け
  • オシロスコープとの違いから紹介
  • 近接プローブでのノイズ源探索
  • EMIプリコンプライアンスモード紹介

初めてのスペアナによるEMIノイズ対策(抜粋)

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