デマンドレスポンス(DR: Demand Response)について、詳しくご説明します。
DRは、電力の需要側(消費者側)が自らの電力使用量をコントロールすることで、電力の需要と供給のバランスを調整する仕組みです。特に、VPP(仮想発電所)を実現するための、核となる運用技術の一つです。
1. デマンドレスポンスの基本
🔌 目的
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電力需給の安定化: 電力不足や電力余剰が発生しそうな時に、需要を抑制したり創出したりして、電力系統の安定を保ちます。
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再生可能エネルギーの有効活用: 天候に左右されやすい再エネの発電変動に合わせて需要を調整し、電力の無駄(出力制御)を防ぎます。
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社会貢献と経済的メリット: 需要家(一般家庭や企業)が協力することで電力系統の安定に貢献でき、その対価として報酬(インセンティブ)を受け取ることができます。
⚖️ DRの二つの区分
DRは、電力の需給状況に応じて、大きく以下の2種類に分けられます。
| 種類 | 状況 | 要請内容 | 調整方法(蓄電池の場合) |
| 下げDR | 電力供給が不足しそうな時(ピーク時など) | 電力使用量を減らす(抑制) | 蓄電池から放電し、系統からの購入電力を減らす。 |
| 上げDR | 電力供給が余剰になりそうな時(再エネ発電が多い時など) | 電力使用量を増やす(創出) | 蓄電池に充電し、系統の余剰電力を吸収する。 |
2. DRの実施方法(対価の受け取り方)
DRには、主に二つの方法があります。
① インセンティブ型(対価型)
アグリゲーターや電力会社からの要請に応じて電力使用量を調整し、その**実績に応じて報酬(インセンティブ)**を受け取る仕組みです。
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仕組み: 電力会社 → アグリゲーター → 需要家(企業・家庭)へ調整の要請が出され、協力した分が金銭的対価として還元されます。
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メリット: 報酬が明確で、節電や自家発電機稼働などの具体的な行動を促しやすい。
② 電気料金型
特定の時間帯の電気料金単価を高く設定することで、需要家の自発的な電力使用量の抑制を促す仕組みです。
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仕組み: ピーク時間帯の単価が高くなる料金プラン(時間帯別料金など)を導入し、需要家は電気代節約のために自然とピーク時の使用を避けます。
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メリット: 参加が比較的容易であり、契約を変更するだけで、継続的に電気代の削減効果が期待できます。
3. 蓄電池がDRで果たす役割
VPPの中核である蓄電池は、DRにおいて非常に重要な役割を果たします。
| DRの種類 | 蓄電池の具体的な動き | 貢献する効果 |
| 下げDR | 蓄電池から放電 | 系統からの電力購入量を削減し、電力不足を回避(ピークカット)。 |
| 上げDR | 蓄電池へ充電 | 系統の余剰電力を吸収し、再生可能エネルギーの出力制御を回避。 |
このように、蓄電池は「電気を使う」「電気を貯める」という両面で、電力の需給バランスを柔軟かつ瞬時に調整できる即効性の高いリソースとして機能します。
デマンドレスポンスは、VPPとともに、今後のエネルギー安定供給と脱炭素化を両立させるカギとして期待されています。



