トラクションインバータ(牽引インバータ)の入力に大容量のDCバスコンデンサ(CDC_LINK)を搭載するのは、主に電圧リップルの低減と安定した電力供給を確保するためです。これは、特に電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)において、システム性能と寿命に直結する非常に重要な設計要素です。
⚡ 大容量DCバスコンデンサの役割とメリット
1. 電圧リップルの低減(主な目的)
インバータがモーターを駆動する際、DCリンク電圧はインバータのスイッチング動作に伴って大きく脈動(リップル)します。
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リップルの発生源:
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インバータがスイッチングする際、瞬時に大電流が流れ込み・流れ出すため、DCリンクの寄生インダクタンス (LStray) に起因するサージ電圧や、電源側から見たインピーダンスによる電圧降下・上昇が発生します。
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三相交流モーターの駆動電流が高調波成分を含むため、DC側にもこれに対応する脈動電流が発生します。
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コンデンサの役割:
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CDC_LINKは、このスイッチングサイクルごとに発生する**脈動電流(リップル電流)を吸収**する役割を果たします。これにより、DCリンク電圧の変動(Δ V)を許容範囲内に抑え、インバータ回路の安定動作を保証します。
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2. インバータの保護と寿命延長
電圧リップルが大きいと、インバータ内の半導体スイッチ(IGBTやSiC-MOSFETなど)に以下の悪影響を与えます。
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過電圧ストレス: スイッチング時のサージ電圧が大きくなり、半導体の耐圧を超えるリスクが増加します。
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発熱: コンデンサ自身のESR(等価直列抵抗)によってリップル電流が熱に変わり、コンデンサや周辺部品の温度上昇を引き起こし、寿命を短縮させます。
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大容量コンデンサは、リップル電流による自己発熱を抑え、システムの高信頼性と長寿命化に貢献します。
3. 電力源としての機能(エネルギー貯蔵)
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CDC_LINKは、モーターの加速時など、バッテリーから瞬間的に大きな電流が供給されない場合に、一時的なエネルギー貯蔵源として機能します。
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また、モーターが回生ブレーキを行う際、インバータが回収したエネルギーを一時的に吸収し、DCリンク電圧の急激な上昇(オーバーシュート)を防ぎます。
🏗️ 車載特有の設計課題
大容量コンデンサを搭載する際、車載用途では以下の課題を考慮する必要があります。
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体積と重量: 大容量化は、コンデンサの体積増大と重量増加を意味し、限られた車載空間と車両の電費に悪影響を与えます。
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ESRとESLの最小化: リップル電流を効率よく吸収し、スイッチング時のサージ電圧を抑えるためには、コンデンサの**ESR(等価直列抵抗)とESL(等価直列インダクタンス)**を極限まで低く抑える必要があります。これは、低インダクタンス設計のバスバーや、フィルムコンデンサの最適配置によって実現されます。
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信頼性: 車載環境は高温・高振動にさらされるため、アルミ電解コンデンサではなく、高信頼性、高耐熱性、低ESRのフィルムコンデンサやセラミックコンデンサが主に使用されます。
大容量DCバスコンデンサは、トラクションインバータの高効率化、小型化、高信頼性化を実現するための「影の主役」とも言える重要な部品です。
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