高電圧半導体CV特性測定器 TECHMIZE TH51Xシリーズ

パワーデバイスの発展を単純なシナリオで描くことは、極めて難しいです。その理由は、技術開発が従来のシリコン(Si)の延長と、次世代のワイドバンドギャップ(WBG)材料の二つの主要な流れで進行しており、さらにそれぞれが異なる市場ニーズと技術的な課題を抱えながら、棲み分けと競合を繰り返しているためです。

主な複雑化の要因は以下の通りです。


 

1. 競争と棲み分けの複雑性

 

パワーデバイスの市場は、単一の技術で支配されるのではなく、複数の材料と構造がそれぞれの強みを活かして共存する形で発展しています。

 

SiCとGaNの分断

 

  • SiC (炭化ケイ素): 高耐圧・大電流の領域(EVのメインインバータ、鉄道、産業用高電力機器)に強みを持ちます。材料コストや製造技術の課題を抱えつつも、大電力用途でSiの置き換えを加速しています。

  • GaN (窒化ガリウム): 高速スイッチング・高周波の領域(データセンター電源、急速充電器、RF)に強みを持ちます。比較的低~中耐圧領域で普及が進んでいますが、高耐圧・大電流化(縦型デバイス)の技術開発も進んでおり、SiCとの境界線が曖昧になりつつあります(例:PSJGaNデバイス)。

 

Siの進化と価格競争

 

  • シリコン (Si) デバイス: IGBT (絶縁ゲートバイポーラトランジスタ) や最新のSuper Junction MOSFET など、既存技術も継続的に改善されており、特にコストの面で依然として大きな優位性を持っています。性能が SiCGaN ほど必要とされない分野では、当面Siが主流であり続けます。


 

2. システムと技術統合の要求

 

デバイス単体の性能だけでなく、システム全体として最適なソリューションが求められるため、単純な性能指標だけでは発展のシナリオを描けません。

技術統合の側面 複雑化の要因
電力変換トポロジー $\text{SST}$(半導体変圧器)のような革新的なシステムでは、デバイスの高速性を最大限に引き出す新しい回路構成や制御技術が不可欠であり、デバイスの進歩と回路技術の進歩が相互に影響し合います。
パッケージング・実装 $\text{SiC}$$\text{GaN}$ の高速・高効率の恩恵を最大限に受けるには、寄生インダクタンスを最小限に抑え、熱抵抗を下げるための先進的なパッケージング技術(パワーモジュール)が必要です。
応用分野の多様化 $\text{EV}$(航続距離)とデータセンター(電力密度)のように、アプリケーションごとに求められる性能指標($\text{WBG}$デバイスの耐圧、スイッチング周波数、信頼性)が異なり、市場の牽引役が常に変化します。

 

3. 根本的な課題

 

技術の発展を予測する上で、基本的な材料の課題が残っていることも複雑さの原因です。

  • 結晶の品質とコスト: SiCGaN は、Si に比べて大口径で高品質な単結晶基板の製造が難しく、これが高コストの主要因となっています。この製造技術の進展速度が、市場普及の速度を左右します。

  • 長期信頼性の確保: 特に高電圧・高温環境下でのデバイスの長期信頼性(例:SiC MOSFET の界面特性など)に関する知見を積み重ねる必要があり、この評価に時間がかかります。

これらの要因が絡み合うため、パワーデバイスの発展は「SiかWBGへ単純に移行する」という一本道のシナリオではなく、「多数の技術が並行して進化し、最適な組み合わせを探り合う」複雑な様相を呈しています。

 

 

 

 

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