
フライングキャパシター線形増幅回路(FCLA)は、高効率なリニア増幅器の一種で、スイッチング技術とフライングコンデンサを組み合わせています。これにより、従来の線形増幅器が持つ低い効率と、スイッチング増幅器が持つ高調波歪みや電磁干渉(EMI)の問題を解決することを目指しています。
動作原理
従来の線形増幅器(クラスA、Bなど)は、出力段のトランジスタを線形領域で動作させるため、常に電力を消費します。一方、スイッチング増幅器(クラスDなど)はトランジスタをオン/オフのスイッチング動作で制御するため高効率ですが、この高速なスイッチングがノイズの原因になります。
FCLAはこれらの欠点を補うために、複数のフライングコンデンサとスイッチ(MOSFETなど)を直列に配置します。入力信号の大きさに応じて、これらのフライングコンデンサを適切にスイッチングすることで、出力電圧を段階的に生成します。これにより、出力段のトランジスタにかかる電圧を低く抑え、電力損失を最小限に抑えながら、出力波形を滑らかに形成します。
特徴と利点
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高効率: 出力段のトランジスタが消費する電力を最小限に抑えるため、従来の線形増幅器に比べて高い効率を実現します。
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低ノイズ・低歪み: スイッチング増幅器と異なり、高速なスイッチング動作を必要としないため、高調波歪みや電磁干渉(EMI)が少ないのが特徴です。
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シンプルな構成: マルチレベルインバータなどと比較して、比較的シンプルな回路構成で実現できる場合があります。
応用例
FCLAは、高効率と低ノイズの両方が求められる様々な分野での応用が期待されています。
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高効率インバータ: 産業用モータの駆動や太陽光発電システムなど、電力変換の高効率化が求められる用途。
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オーディオ増幅器: 高音質な音声再生が求められるハイエンドオーディオ機器。
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磁気共鳴画像法(MRI): 医療機器の中でも、非常に高い精度と低ノイズが要求される分野。
参考:日経クロステック
横浜国立大学・小原秀嶺氏の研究グループ
電磁ノイズゼロのインバーター、多段リニアアンプの個別制御で多素子化に道
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ne/18/00007/00267/?P=4
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出典: 横浜国立大学・小原秀嶺氏の研究グループ |