
無人搬送機(AGV)におけるワイヤレス電力伝送とは、給電用のケーブルを接続することなく、電力を非接触でAGVに供給する技術です。これにより、充電時の手間や時間の削減、メンテナンス性の向上、そして24時間稼働の実現に貢献します。
仕組みと主な方式
ワイヤレス電力伝送の仕組みは、主に電磁誘導方式と磁界共鳴方式の2つに大別されます。どちらの方式も、電力を送る側のコイル(送電コイル)と電力で動作する機器側のコイル(受電コイル)を用いますが、その原理に違いがあります。
1. 電磁誘導方式
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原理: 送電コイルに電流を流すと、その周りに磁界が発生します。この磁界が受電コイルを通過すると、電磁誘導の法則に従って電流が発生し、電力として利用できます。
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特徴: 送電コイルと受電コイルの距離が非常に近い場合に高い効率を発揮します。
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AGVでの利用: AGVが充電ステーションに停車した際に、コイル同士が密着するように配置することで充電が行われます。
2. 磁界共鳴方式
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原理: 送電コイルと受電コイルを特定の周波数で共振させることで、効率よく電力を伝送します。音叉の共鳴と同じ原理です。
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特徴: 電磁誘導方式に比べて送電距離が長く、コイルの位置ズレにも強いというメリットがあります。
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AGVでの利用: AGVが走行中に給電できる「走行中給電」や、充電ステーションに厳密に停止しなくても充電できるシステムなどに応用されています。
導入によるメリット
AGVにワイヤレス電力伝送を導入することで、以下のようなメリットが得られます。
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作業効率の向上: 従来の充電作業(ケーブルの抜き差し)が不要になり、AGVの自動運転に組み込みやすくなります。これにより、充電のための人員や時間を削減できます。
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メンテナンス性の向上: 物理的な接点がないため、ケーブルやコネクタの摩耗、断線といったトラブルがなくなります。これにより、メンテナンスコストやダウンタイムを削減できます。
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安全性と稼働率の向上: 接点がないため、感電のリスクや火花が発生する危険性を低減できます。また、走行中の給電が可能になることで、バッテリー容量を抑えつつ、ほぼ24時間体制での連続稼働も実現できます。
AGV(無人搬送機)におけるワイヤレス電力伝送で実用化されている周波数は、主に数十kHzから数百kHzの帯域です。
主な周波数帯
AGVのワイヤレス電力伝送では、磁界共鳴方式や電磁誘導方式が主流で、これらの方式では一般的に以下の周波数帯が使われます。
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85 kHz帯: 電気自動車(EV)向けに制度化・標準化が進んでおり、AGVなどの産業機器にも拡張が検討されています。高効率で大電力の伝送に適しています。
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100 kHz帯: 産業用機器のワイヤレス給電で広く使われています。
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500 kHz帯: 大電力の電界結合ワイヤレス電力伝送などで利用が活発化しています。
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6.78 MHz帯: 磁界共鳴方式などで利用されることがあります。この周波数帯は国際的に推奨されています。
これらの周波数帯が選ばれるのは、伝送効率が高く、電波法令上の制約が比較的少ないためです。AGVの用途や伝送距離、必要な電力などに応じて、最適な周波数帯が選択されます。
参考:電波監理審議会(第1136回)会議資料 日時 令和6年11月27日(水)
(搬送ロボット用ワイヤレス電力伝送システムの導入等のための制度整備)(諮問第19号)
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