OCTRAM (Oxide-Semiconductor Channel Transistor DRAM) は、従来のシリコントランジスタの代わりに酸化物半導体トランジスタをメモリセルに採用した新しいDRAM技術です。
特に、**極めて低いオフ電流(リーク電流)**という酸化物半導体の特性を活かし、DRAMの低消費電力化と大容量化を目指してキオクシア(台湾南亜科技社との共同開発)などによって開発が進められています。
OCTRAMの主な特徴とメリット ✨
OCTRAMは、従来のシリコン(Si)を用いたDRAM(一般的に6F²レイアウト)が抱えるスケーリング限界と消費電力の課題を解決するために考案されました。
1. 超低消費電力の実現 (極低オフ電流)
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酸化物半導体の採用: チャネル材料にInGaZnO(インジウム・ガリウム・亜鉛・酸化物)などのワイドバンドギャップ**を持つ酸化物半導体を採用しています。
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極低リーク: ワイドバンドギャップのため、トランジスタがオフ状態(非導通状態)のときに流れるオフ電流が極めて小さい(アトアンペア (aA) レベル)のが最大の特徴です。
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リフレッシュ頻度の低減: DRAMはデータ保持のために電荷が漏れる分を定期的に再書き込み(リフレッシュ)する必要がありますが、オフ電流が低いことで電荷の漏れが少なくなり、リフレッシュ頻度を大幅に低減できます。これにより、DRAM全体の消費電力を大きく削減できます。
2. 大容量化(4F²レイアウトの実現)
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メモリセル構造: 従来のDRAMが一般的に6F²(Fは最小加工寸法)のセルサイズであるのに対し、OCTRAMは4F²の高密度レイアウトを実現できるとされています。
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縦型トランジスタ: セルトランジスタに縦型のゲートオールアラウンド(GAA)構造を採用し、キャパシタの上にトランジスタを配置する「キャパシタ 1st プロセス」を用いることで、セル面積の削減と高集積化を可能にしています。
3. 高いオン電流と信頼性
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高オン電流: エッチング速度を最適化することで、高いオン電流(導通状態の電流)も両立しています。これにより、DRAMに求められる高速な書き込み・読み出し性能が維持されます。
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高信頼性: 酸化物半導体の特性(低い正孔移動度)により、Siトランジスタで問題となる基板浮遊効果の影響を受けにくいことや、ジャンクションレス構造により接合欠陥に起因する不良が起きにくいことなどから、高信頼性が期待されます。
動作原理(DRAMセルとして)
基本的な動作原理は従来のDRAM(1トランジスタ1キャパシタ、1T1C型)と同じです。
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メモリセル: 1つのトランジスタ(酸化物半導体トランジスタ)と1つのキャパシタ(コンデンサ)で構成されます。
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データ記録: キャパシタに電荷を蓄積するか(「1」)、しないか(「0」)でデータを記録します。
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アクセス: トランジスタをスイッチとして使用し、データをキャパシタに書き込んだり、読み出したりします。
OCTRAMのトランジスタが極低リークであるため、キャパシタに蓄積された電荷が失われにくく、長時間のデータ保持が可能になります。


