SIGLENT(シグレント)SDS5000X HDシリーズ デジタル・オシロスコープ

電気自動車(EV/PHEV)のオンボード充電システムにおけるEMC(電磁両立性)は、車両の安全性、信頼性、および性能を確保するために非常に重要です。

 

EMCの基本概念

 

EMCとは、電子機器やシステムが、意図しない電磁妨害を引き起こしたり、他の機器からの妨害によって性能が低下したりすることなく、互いに共存できる能力を指します。

EMCは以下の2つの側面で構成されます。

  • EMI (Electromagnetic Interference): 電磁妨害。機器が発する不要な電磁エネルギーが、他の機器に悪影響を及ぼす現象です。オンボード充電システムの場合、高周波スイッチングによって発生するノイズがこれにあたります。

  • EMS (Electromagnetic Susceptibility): 電磁感受性。機器が外部からの電磁妨害に対して、どの程度耐えられるかを示す能力です。外部のノイズ(例:携帯電話の電波、ラジオ波)によって、充電システムの動作が不安定になる可能性があります。


 

オンボード充電システムにおけるEMC課題

 

オンボード充電システム(OBC)は、交流(AC)を直流(DC)に変換してバッテリーを充電する役割を担っています。この変換プロセスは、高周波のスイッチングによって行われるため、強力な電磁ノイズ源となります。

主なEMC課題は以下の通りです。

  • 伝導ノイズ: AC電源ラインやDC出力ラインを通じて伝わるノイズです。特に、AC入力側では高調波電流や高周波ノイズが問題となり、家庭用電力網や他の電気機器に悪影響を及ぼす可能性があります。

  • 放射ノイズ: 充電システムから空間に放射される電磁波です。車両内の他の電子機器(例:ナビゲーションシステム、ラジオ、センサー)の誤動作を引き起こしたり、外部の無線通信に干渉したりする可能性があります。

  • サージ・ESD: 落雷や静電気放電(ESD)など、外部からの大きな電磁エネルギーによって、充電システムが損傷したり、誤動作したりする可能性があります。


 

EMC対策

 

これらの課題に対処するため、以下のようなEMC対策が講じられます。

 

1. ノイズフィルタ

 

充電システムの入力側と出力側に、EMIフィルタを設置して、伝導ノイズを除去します。

  • コモンモードチョークコイル: 電源ラインのペアに共通して流れるノイズ電流を抑制します。

  • コンデンサ: ノイズ成分を吸収し、グラウンドに逃がす役割をします。

 

2. シールドとグラウンディング

 

  • シールド: 充電システムの筐体を導電性の高い材料で覆い、内部のノイズが外部に放射されるのを防ぎます。また、外部からのノイズが内部に侵入するのを防ぐ役割もします。

  • グラウンディング(接地): ノイズ電流を安全な経路で逃がすため、システムの各部を適切に接地します。低インピーダンスのグラウンド接続が重要です。

 

3. PCBレイアウトと部品配置

 

プリント基板(PCB)の設計段階でEMCを考慮することが不可欠です。

  • 高周波回路の最短化: スイッチング回路などの高周波部分を短くし、ループ面積を最小化することで、アンテナ効果による放射ノイズを低減します。

  • 部品の適切な配置: ノイズを発生しやすい部品と、ノイズに弱い部品を離して配置します。

  • 多層基板の利用: グラウンドプレーンを設けることで、シールド効果を高め、ノイズの伝搬を抑制します。

これらの対策は、自動車メーカーやサプライヤーが遵守すべき国際的なEMC規格(例:CISPR 25、ISO 7637-2)に基づいて実施されます。適切なEMC設計とテストによって、EVの充電システムは、他のシステムと円滑に連携し、安全で信頼性の高い動作を維持できます。🚗

 

 

 

詳細情報: 株式会社 e・オータマ  https://www.e-ohtama.jp

電気自動車のオンボード充電システムのEMC — IEC 61851-21-1 の概要

https://www.emc-ohtama.jp/emc/doc/iec61851-21-1-explained.pdf

 

 

T&MコーポレーションではNEXTEM社と協調してSIGLENT社、Ceyear社の電子計測器(スペアナ, SG, VNA等)による EMC評価に必要な電子測定器、システムの提案を行っております。お気軽にお問い合わせフォームよりご相談くださいませ。
https://tm-co.co.jp/contact/

 

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