SIGLENT(シグレント) SDS800X HDシリーズ デジタル・オシロスコープ

植込型BCI(Brain-Computer Interface: 脳とコンピューターのインターフェース)医療機器とは、脳の活動を直接計測するために、外科手術によって電極や小型のセンサー(チップ)を脳の内部や表面に埋め込むタイプの医療機器・技術です。

脳と外部のコンピューターや機械を直接つなぐことで、病気や事故で失われた身体機能やコミュニケーション能力を取り戻すことを目指す、最先端の侵襲的(体を傷つける)な医療技術です。


 

植込型BCIの仕組みと特徴

 

植込型BCIは、非侵襲型BCI(頭皮上から脳波を計測するヘッドセットなど)と比較して、非常に高い精度と安定した信号取得が可能です。

 

仕組み

 

  1. 電極の埋め込み(外科手術): 開頭手術などにより、脳の表面(皮質脳波: ECoG)や脳内に直接、微小な電極アレイ(剣山状やシート状)またはチップを埋め込みます。

  2. 脳活動の計測: 埋め込まれた電極が、神経細胞から発せられる微細な電気信号(脳波や活動電位)を計測します。

  3. 信号の解読: 計測された高解像度の脳信号を、AI(人工知能)や機械学習モデルを用いてリアルタイムで解析・解読します。

  4. 外部機器の制御: 解読された信号(例:「手を動かしたい」「話したい」という思考)に基づき、ロボットアーム、義肢、コンピューター、意思伝達装置などの外部機器に指令を送ります。

 

植込型BCIのメリット・デメリット

 

特徴 メリット デメリット
信号の質 高精度・高解像度な神経信号を取得できるため、外部機器を詳細かつ迅速に制御できる。 外科手術が必要であり、感染症、出血、脳損傷などのリスクが伴う。
信号の安定性 頭蓋骨や頭皮の影響を受けず、低ノイズ・安定した信号取得が可能。 体内に埋め込むため、長期的な生体適合性(拒絶反応、信号の経時的な劣化)が課題。
用途 重度の運動障害・言語障害を持つ患者の機能回復・代償に特に有効。 費用が高額になりがちで、臨床応用には厳格な倫理的・法的な審査が必要。

 

植込型BCIの主な用途と将来像

 

植込型BCIの最も重要な用途は、失われた身体機能やコミュニケーション能力の回復です。

  1. 運動機能の回復・代償:

    • 義肢・ロボットアームの制御: 麻痺などで体が動かせない人が、「動かそう」と念じるだけで、義手やロボットアーム、車椅子などを自在に操作できるようになります。

    • リハビリテーション: 脳卒中などによる麻痺患者が、自身の運動イメージをBCIで読み取り、麻痺した手足の電動装具などを動かすことで、脳の代償回路を活性化させ、機能回復を促します。

  2. コミュニケーションの再構築:

    • 意思伝達装置: ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの重度の言語障害を持つ人が、「文字を入力したい」「話したい」という思考をBCIで読み取り、コンピューター上で文字入力や音声合成を可能にします。

  3. 神経疾患の治療:

    • 脳深部刺激療法(DBS)の進化: パーキンソン病やてんかん、将来的にはうつ病などの精神神経疾患に対し、脳活動をモニタリングしながら最適な電気刺激を与える治療法への応用が期待されています。

  4. 感覚機能の回復:

    • 人工内耳のように、失われた視覚や聴覚といった感覚機能を補完・代償する技術開発も進められています。

イーロン・マスク氏のNeuralink(ニューラリンク)や、Synchron社のStentrode(ステントロード)などの企業が、この分野の研究開発を世界的に牽引しており、人類の生活の質を根本的に変える可能性を秘めた革新的な医療技術として注目されています。