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相互相関(Cross-correlation)

GLOSSARY

相互相関(Cross-correlation)法は、測定器自体のノイズフロアよりも低い位相雑音を測定するための「魔法の杖」のような手法です。

全ディジタル計測において、ADCのジッタや熱雑音が壁となる場合、この手法を導入することで理論上、測定限界を無限に(測定時間をかければかけるほど)下げることが可能になります。


1. 相互相関法の基本原理

信号を2つの独立した系(チャンネル)で同時に測定し、それらの相関(共通点)のみを抽出します。

  • 共通成分: 被測定信号(DUT)の位相雑音。

  • 非共通成分: 各ADC、アンプ、基準信号源が個別に持つ内部雑音。

数学的には、2つの系統の出力を x(t) と y(t) とすると、それぞれの相互相関をとることで、各系統で独立な雑音成分は平均化(平均をとる回数 M)によって 1/√M で減衰していきます。


2. システム構成(全ディジタル)

全ディジタル方式では、1つのDUT出力を分配器で分け、2つの独立したADCでダイレクト・サンプリングします。

処理のプロセス

  1. 分配: DUT信号を2系統に分ける。

  2. サンプリング: 完全に独立した(またはコヒーレントな)2つのADCでデジタル化。

  3. 位相抽出: 各系統でヒルベルト変換等を用いて位相ゆらぎ ϕ1(t)\phi_1(t) と ϕ2(t)\phi_2(t) を算出。

  4. FFT & 相互相関:

    • それぞれの信号を周波数領域 Φ1(f)\Phi_1(f) と Φ2(f)\Phi_2(f) に変換。

    • クロス・スペクトル密度(CSD) Sxy(f)=Φ1(f)⋅Φ2∗(f)S_{xy}(f) = \Phi_1(f) \cdot \Phi_2^*(f) を計算。

    • 多数回の平均化を行う。


3. 改善されるノイズフロア

相互相関の効果は、平均化回数 MM に対してデシベル単位で以下のように現れます。

平均回数 (M)

改善量 (dB)

10

5 dB

100

10 dB

1,000

15 dB

10,000

20 dB

注意点: > 2つの系統が完全に独立している(アイソレーションが保たれている)ことが絶対条件です。電源ラインや基準クロックを通じて雑音が相関を持ってしまうと、その雑音は「DUTの雑音」として誤検知されてしまいます。


4. なぜ「全ディジタル」と相性が良いのか

従来のミキサを用いる方式では、2つの独立したアナログ局発(LO)を用意する必要があり、装置が非常に高価で巨大になりました。

全ディジタル方式では、高速ADCのデータをFPGAやPC内で並列処理するだけで済むため、ハードウェアの追加コストを抑えつつ、極めて低いノイズフロアを実現できます。


次のステップ

相互相関法を適用した際の「測定時間の見積もり(何回平均すれば目標の精度に届くか)」や、FPGA実装時の「リアルタイム演算の負荷」について、具体的な数値を交えて掘り下げてみますか?

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