短チャネル効果(SCE)の主要な現れであるDIBL(Drain-Induced Barrier Lowering)とサブスレッショルドリークを抑制するための主要な技術は、ゲートによるチャネルの静電制御を最大化することです。
主な対策は、トランジスタ構造を**プレーナー(平面)からマルチゲート構造(立体)**へ進化させることと、チャネル特性を最適化することです。
1. トランジスタ構造による抑制 🏗️
A. マルチゲート構造の採用
最も効果的な抑制策は、チャネルをゲート電極で多方面から取り囲むことです。これにより、チャネルの電位に対するドレイン電極の影響(DIBLの原因)を排除し、ゲート電極の影響を絶対的に優位にします。
-
FinFET (Fin Field-Effect Transistor):
-
チャネルを垂直のフィン状に立て、ゲート電極が3面(両側面と上面)を囲みます。
-
これにより、ゲート制御性が大幅に向上し、DIBLや短チャネル効果が抑制されました。
-
-
GAA (Gate-All-Around) FET:
-
チャネルをナノシートやナノワイヤの形でゲート電極が全周(4面)から完全に囲みます。
-
これはFinFETよりもさらに高い静電制御性を実現し、極限の微細化(3 nmノード以下)におけるDIBLとリーク電流を最小化します。
-
B. SOI技術の利用
-
FD-SOI (Fully Depleted Silicon-on-Insulator):
-
チャネル層を極めて薄いSi膜とし、その下部を絶縁膜(BOX)で完全に空乏化させます。
-
これにより、チャネルの電位が完全にゲートに制御され、ドレインの影響が遮断されるため、DIBLが効果的に抑制されます。
-
2. デバイスパラメータの最適化
A. ゲート絶縁膜の改善
-
高誘電率(High-κ)絶縁膜の採用:
-
SiO2の代わりに、HfO2などの高誘電率(High-κ)材料をゲート絶縁膜に用いることで、物理的な膜厚を厚くすることなく実効的なゲート容量(Cox)を大きく保てます。
-
Coxの増大は、ゲート電界の影響を強化し、チャネルの制御性を高めるため、DIBLを抑制します。
-
B. サブスレッショルドスイング(SS)の改善
-
サブスレッショルドリークは、SSの値を理想値(室温で60 mV/decade)に近づけることで抑制されます。SSはゲートとチャネルの静電結合の強さを示す指標であり、上記のマルチゲート構造や高-κ技術はSSを改善する効果があります。
要するに、DIBLやサブスレッショルドリークを抑制する鍵は、いかにしてドレイン電極の影響を遮断し、ゲート電極の影響をチャネル全体に浸透させるか、という点に集約されます。




