DOA(Direction of Arrival:到来方向)推定は、複数のアンテナ(アレーアンテナ)で受信した信号の位相差や時間差を解析することで、電波がどの方向から飛んできたのかを特定する技術です。
4chコヒーレント信号発生器が、このDOA推定を行う受信機の性能試験に使われるのは、正確に位相差をつけた信号をシミュレーションする必要があるからです。
DOA推定の基本的な仕組みを、最も直感的な手法である**「干渉計方式」**を例に解説します。
📐 DOA推定の基本的な仕組み(干渉計方式)
1. 複数のアンテナによる信号の受信
DOA推定では、空間的に配置された複数のアンテナ素子(アレーアンテナ)を使用します。
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電波は非常に速く進むため、遠方から飛んでくる電波は平面波として扱われます。
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この平面波が、間隔 d で配置されたアンテナ素子1と素子2に到達するとき、斜め方向(角度 θ)から到来する場合、素子1と素子2では到達する時間に差が生じます。
2. 位相差の発生と測定
電波の到達時間の差は、受信信号の**位相差 (ΔΦ)**として観測されます。
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電波の到来方向がアンテナアレイの真正面( θ = 0° )であれば、位相差はゼロです。
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電波が斜め方向から到来すればするほど、到達距離の差が大きくなり、位相差も大きくなります。
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3. 到来方向の計算
上記の式を $\theta$ について解くことで、測定された位相差 $\Delta\phi$ から到来方向 $\theta$ を推定できます。
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つまり、DOA推定は、複数の受信チャネル間の**「精密な位相差の測定」**に帰着します。
4. 4chコヒーレント信号発生器の貢献
4chコヒーレント信号発生器は、このDOA推定システムを試験する際に、以下のようなシミュレーションを実現します。
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DOA模擬信号の生成: 上記の式に基づき、ターゲットとなる到来角 θ を決定します。その θ に対応する位相差 ΔΦ を計算し、4つのチャネルにそれぞれ適切な位相差を設定して、受信機に入力します。
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受信機の精度評価: 受信機が、入力された4chの信号から、設定した到来角 θ をどれだけ正確に推定できるかを評価します。
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ノイズ/妨害波耐性の試験: 4chのうち1chにテスト信号を入れ、残りのチャネルに位相と振幅が異なるノイズや妨害波を加えて、受信機のDOA推定のロバスト性(堅牢性)を評価します。
なお、高性能なDOA推定には、この干渉計方式を発展させた高分解能推定アルゴリズム(例:MUSIC法、ESPRIT法)が用いられ、これらも複数のコヒーレントな受信信号の相関を解析する原理に基づいています。
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