MOSキャパシタ(MOS Capacitor)とは
~金属‐酸化膜‐半導体構造を持つ基本的なC–V測定用デバイス~
■ 定義
**MOSキャパシタ(MOS Capacitor)**とは、**金属(Metal)–酸化膜(Oxide)–半導体(Semiconductor)**の三層構造からなる半導体デバイスであり、MOSトランジスタの基本構造の一部にあたります。
この構造を利用して、しきい値電圧(Vth)、酸化膜容量(Cox)、ドーピング分布、界面準位密度(Dit)などの重要な電気的特性を評価するためのC–V測定に広く用いられています。
■ 構造図(概念)
■ MOSキャパシタのC–V特性
MOS構造にDCバイアスを印加してC–V測定を行うと、以下の3つの領域に分かれた特有の容量変化曲線が得られます:
項目 | 内容 |
---|---|
✅ 蓄積領域(Accumulation) | 多数キャリアが酸化膜界面に集まり、最大容量(Cox)に近づく |
✅ 空乏領域(Depletion) | 少数キャリアが後退し、空乏層が形成され容量が減少 |
✅ 反転領域(Inversion) | 反対型のキャリアが蓄積し、低周波では容量が再上昇(高周波では低いまま) |
この曲線から、MOSキャパシタの物理パラメータが定量的に抽出されます。
■ 測定・評価される主なパラメータ
パラメータ | 説明 | 応用 |
---|---|---|
Cox(酸化膜容量) | 酸化膜厚から導出可能 | 絶縁膜品質の評価 |
Vth(しきい値電圧) | MOSFET動作の基準電圧 | LSI設計最適化 |
Dit(界面準位密度) | 酸化膜/半導体界面の欠陥レベル | 信頼性・性能評価 |
ドーピング濃度分布 | C–V勾配から逆算可能 | 拡散深さやプロファイル管理 |
誘電率評価 | 酸化膜の物理定数抽出 | 材料開発用途 |
■ 応用例・用途分野
分野 | 使用例 |
---|---|
✅ 半導体製造プロセス評価 | 酸化膜形成条件の最適化 |
✅ パワーデバイス開発 | IGBT/MOSFETの基礎電気特性測定 |
✅ 材料研究 | 新規絶縁膜や酸化膜の評価 |
✅ 大学・研究機関 | キャリア輸送や界面現象の基礎研究 |
✅ 信頼性試験 | 熱・電気ストレスによる劣化評価 |
■ 測定時の注意点
項目 | 内容 |
---|---|
✅ 測定周波数の選定 | 高周波(1MHz)と低周波(10kHz以下)で結果が異なる |
✅ リーク電流の抑制 | 酸化膜のピンホールなどがあると正確な測定が困難 |
✅ プローブ接触の安定性 | 小面積MOSキャパシタは特に重要 |
✅ 試料保持と温度制御 | 温度依存性評価の際は厳密な制御が必要 |
■ まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
定義 | 金属–酸化膜–半導体の構造を持つ基本デバイス |
役割 | C–V測定による半導体・絶縁膜特性の定量評価 |
関連測定 | Cox, Vth, Dit, ドーピング濃度、反転特性 |
測定機器 | 半導体CV特性測定器、LCRメーター、高精度C–V測定システム |
利点 | 非破壊で微細構造の電気特性を可視化 |
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