SIGLENT(シグレント)SDS5000X HDシリーズ デジタル・オシロスコープ

複数のナノシートチャネルを重ねたナノシートFET(Nanosheet FET)は、GAAFET(Gate-All-Around FET、全周ゲート型FET)の一種であり、積層ナノシートFET(Stacked Nanosheet FET)またはマルチブリッジチャネルFETとも呼ばれます。

これは、トランジスタの性能と集積度を向上させるために、最先端の半導体プロセスで採用されている革新的な構造です。

 

ナノシートFETの主要な特徴

 

 

1. 構造と動作原理

 

  • チャネル構造: 従来のFinFETのフィン構造を横倒しにして、非常に薄いナノシート(薄いシート状の半導体チャネル)を形成し、それを縦方向に複数層積層(スタック)させた構造です。

  • 全周ゲート(GAA): この積層された各ナノシートチャネルを、1つのゲート電極が四方すべて(全周)から取り囲んでいます。これにより、ゲートによるチャネルの制御が理想的に行えます。

 

2. 利点

 

  • 優れた静電制御: 全周ゲート構造により、チャネルへのゲート電圧の影響が最大限になり、電流のオン/オフの切り替えが非常にシャープになります。これにより、トランジスタがオフの時に電流が漏れ出すリーク電流を極めて低く抑えられます。

  • 高い駆動能力(オン電流): 複数のナノシートが並列に接続されているため、実効的なチャネル幅(Weff)を大きく確保でき、トランジスタがオンの時の駆動電流(デバイスの動作速度に寄与)を増やせます。

  • 高集積化: 積層構造により、デバイスの設置面積(フットプリント)を大きくすることなくチャネル幅を増やせるため、回路の集積度向上に貢献します。

 

3. トランジスタ技術の進化における位置づけ

 

ナノシートFETは、微細化の限界に直面したプレーナ型FET(Planar FET)から、FinFET(フィンFET)を経て、さらに進化させた次世代のトランジスタ構造として、主に3nmプロセス以降の最先端ロジック半導体で採用が進んでいます。


 

FinFETとの関係

 

ナノシートFETは、FinFETの自然な進化と見なすこともできます。

  • FinFET: 縦に立てたフィン状のチャネルをゲートが三方から囲みます(トライゲート)。

  • 積層ナノシートFET: FinFETの複数のフィンを横倒しにして積層することで、チャネルをゲートが四方から囲む全周ゲート構造に進化させています。

この積層ナノシートFET技術は、特に回路のCMOS化(P型FETとN型FETの組み合わせ)における微細化をさらに進めるための「フォークシート構造」などの新しい設計にも繋がっています。