SIGLENT(シグレント) SDS800X HDシリーズ デジタル・オシロスコープ

メカニカル・リレーのOFF時過電圧トラブルの主な対策は、リレーコイルの逆起電力(サージ電圧)の吸収です。コイルの電流を遮断した際に発生するこの高電圧が、駆動回路(トランジスタなど)の破壊や誤動作の原因となります。


 

💡 主な対策

 

 

1. サージ吸収回路の付加

 

リレーコイルの両端にサージ吸収回路を付加するのが最も一般的な対策です。

  • ダイオード(フライホイールダイオード/サージ吸収ダイオード)

    • 直流(DC)リレーコイルに最も多く用いられます。

    • コイルに並列に逆方向(カソード側が電源側)に接続し、OFF時に発生した逆起電力をダイオードを通してコイル内で還流させ、電圧上昇を抑えます。

    • 注意点: 復帰時間(リレーOFFになるまでの時間)が長くなる傾向があります。

  • バリスタ(MOV:Metal Oxide Varistor)

    • 交流(AC)リレーのコイルや接点保護によく用いられますが、DCリレーにも使用可能です。

    • 一定の電圧を超えると急激に抵抗が下がり、サージ電流を吸収します。

  • CR吸収回路(スナバ回路)

    • コンデンサ(C)と抵抗(R)を直列にした回路で、主に交流(AC)リレーの接点側や一部のDCリレーコイルに用いられます。

    • サージエネルギーを吸収・放散し、電圧上昇の緩和とノイズ抑制に効果があります。

 

2. 配線上の工夫

 

サージ吸収部品を適切に配置しても、配線インダクタンスの影響で保護効果が薄れることがあります。

  • 保護部品の配置: 保護ダイオードやコンデンサは、リレーコイルの端子だけでなく、保護したい半導体部品(スイッチング素子)の近くにも配置することで、配線が短い状態となり、配線インダクタンスの影響を軽減できます。

  • 配線の工夫: コイルへの往復の線を**ツイスト(ひねる)**することで、発生する磁界を打ち消し合い、ノイズ抑制効果を高めます。


リレーコイルのサージ対策は、リレーだけでなく、それを駆動する半導体素子の保護に不可欠です。

 

下記資料では「リレーコイルのサージ対策技術」について詳しく解説されています。

『メカニカル・リレーOFF時の過電圧トラブル解消のヒント』 武田 英夫 トランジスタ技術2025-12月号

 

 

半導体部品の保護に不可欠な電磁リレーの基礎知識とサージ対策について解説している動画です:

メカニカル・リレーOFF時の 過電圧トラブル解消のヒント (動画)