
「Rectenna Array Crossing a Loop and Dipole Antennas」は、無線電力伝送(WPT: Wireless Power Transmission)やRFエネルギーハーベスティング(RF-EH: Radio Frequency Energy Harvesting)の分野で研究されている、複数の機能を組み合わせたレクテナ(整流アンテナ)アレイの構造を指します。
これは、特に日本の研究者によって提案・解析されている新型レクテナアレイの名称です。
📌 構造の概要
この構造の最大の特徴は、異なる種類のアンテナ(ループアンテナとダイポールアンテナ)を組み合わせ、さらにそれらを交差させて配列した点にあります。
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レクテナ(Rectenna):
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アンテナ(Antenna)と整流器(Rectifier、ダイオード)を組み合わせた複合デバイスです。空中の電波(RFエネルギー)を受信し、それを直流(DC)電力に変換する役割を持ちます。2
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ループアンテナ(Loop Antenna)とダイポールアンテナ(Dipole Antenna):
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ループアンテナは主に磁界成分を、ダイポールアンテナは主に電界成分を受信します。
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これらを組み合わせることで、電界と磁界の両方のエネルギーを効率よく捕捉し、受信偏波(電波の振動方向)に依存しにくい広範な受信能力を目指します。
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交差構造 (Crossing):
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複数のアンテナ素子を交差させることで、限られた面積内で多素子化し、アレイ(配列)の利得を向上させたり、異なる偏波を受信したりする能力を高めます。
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💡 研究の目的と利点
この複合的な構造を採用する主な目的は、広範囲から効率よく電力を集めることにあります。
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デュアル偏波対応: ダイポールとループという直交に近い特性のアンテナを組み合わせることで、電波の偏波が変化しても安定して受信できる能力(デュアル偏波または円偏波に近い特性)を持たせることが可能です。これにより、受信アンテナと送信アンテナの偏波不一致による電力損失を低減できます。
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高効率・高出力: アンテナアレイとして機能させることで、単体のレクテナよりも広い開口面積で電波エネルギーを捕捉し、より多くのDC出力電力を得ることができます。
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無線電力伝送距離の拡張: 高い利得と効率により、給電側からの電波を受信して給電できる距離の延長に貢献します。
この技術は、環境中に存在する微弱な電波(Wi-Fiや放送波など)から電力を得るRFエネルギーハーベスティングや、特定の送信機から効率よく電力を送るワイヤレス給電システムへの応用が期待されています。
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