オシロスコープのパッシブプローブを使用する際、特に高速な信号や立ち上がりの鋭い波形を観測する場合に**ダンピング抵抗(直列終端抵抗)**を挿入することは、波形の忠実度を向上させる非常に有効な手法です。
なぜ抵抗を入れるのか、その理由と具体的な実装方法について解説します。
1. ダンピング抵抗を入れる理由:共振の抑制
パッシブプローブの先端(チップ)からグラウンドリードまでの経路には、わずかながら寄生インダクタンス (L) が存在します。また、プローブ自体の入力容量や基板の寄生容量 (C) も存在します。
これらが組み合わさると LC 直列共振回路が形成され、信号の立ち上がりエッジで**リンギング(オーバーシュート)**が発生します。
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問題点: 寄生インダクタンスが大きいほど、共振周波数が低くなり、観測波形が本来の信号よりも大きく揺れてしまいます。
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解決策: 経路に数~数十 Ω の抵抗(ダンピング抵抗)を直列に挿入することで、回路の Q 値(共振の鋭さ)を下げ、エネルギーを熱として消費させることでリンギングを抑え込みます。
2. 具体的な実装と抵抗値の選び方
通常、プローブの先端に直接、小型のチップ抵抗やリード抵抗をハンダ付けして使用します。
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推奨される抵抗値: 一般的に 20 Ω ~ 100 Ω 程度が使われます。
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抵抗が小さすぎると、リンギング抑制効果が足りません。
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抵抗が大きすぎると、プローブの入力容量と合わせてローパスフィルタ(LPF)を形成してしまい、帯域幅が制限され、立ち上がり時間が遅くなります。
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実装のコツ:
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最短距離で接続: 抵抗のリード線自体がインダクタンスになるため、できるだけ短く実装します。
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グラウンド処理: ダンピング抵抗を入れるのと同時に、長いワニ口クリップのグラウンドリードを使わず、スプリンググラウンドなどを使用して接続ループを最小化することが不可欠です。
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3. メリットとデメリット
| 特徴 | 効果 |
| メリット | リンギングやオーバーシュートが劇的に減少し、真の波形に近くなる。 |
| デメリット | 系の帯域幅がわずかに低下する。また、プローブの入力インピーダンスが変化するため、DC精度に極わずかな影響が出る場合がある(通常は無視できる範囲)。 |
まとめ
高精度な測定が必要な場合、特に数ns以下の立ち上がり時間を持つ信号(高速なロジック信号やスイッチング電源のゲート波形など)を観測する際は、プローブ先端に 50 Ω 程度の抵抗を介してプロービングすることを検討してください。
もし特定の周波数帯(例えば数GHz帯など)での測定や、特定のプローブモデルでの最適値について詳細が必要であれば、さらに詳しくお調べすることも可能です。
次は、お手持ちのプローブの帯域幅や、測定対象の信号の立ち上がり時間に基づいた最適な抵抗値の計算方法について確認しましょうか?
下記資料では「オシロスコープのプローブ」について詳しく解説されています。
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Teledyne LeCroy: "DDR Probing Best Practices"
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DDRメモリのような高速信号測定では、ダンピング抵抗の有無が波形に致命的な差を生むため、具体的な実装例(埋め込み抵抗など)が紹介されています。
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Tektronix: "ABCs of Probes (プローブの基礎)"
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プロービング全般のバイブル的資料です。寄生インダクタンスによるリンギングのメカニズムと、減衰(ダンピング)の必要性について図解されています。
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Keysight: "8 Hints for Better Scope Probing (オシロスコープ・プロービングを成功させるための8つのヒント)"
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ヒント2や3の周辺で、グラウンドリードの長さによる影響と、先端抵抗(Damping Resistor)を用いた補正について言及されています。
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出典:Google Gemini












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