ハイブリッドボンディングと裏面配線形成(BS-PDN)は、半導体の高性能化と高集積化を支える最先端のプロセスであり、これに伴いCMP(化学機械研磨)技術には、従来よりも遥かに高い平坦度、清浄度、そして異なる材料に対する制御性が求められています。
主な新たなCMP技術課題は以下の3点です。
1. ハイブリッドボンディング (Hybrid Bonding) 向けの課題
ハイブリッドボンディングは、Cu(銅)と誘電体(通常はSiCNやSiO2)の配線を直接、原子レベルで接合する技術です。この接合を成功させるために、CMPは以下の課題を解決する必要があります。
📌 超高精度の表面平滑化と清浄度
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原子レベルの平坦度: 成功率の高い接合のためには、接合面の表面粗さ(RMS)を0.1nm以下といった極めて高いレベルで達成する必要があります。これは、従来のCMPよりも遥かに厳しい要求です。
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パーティクル・残渣の除去: 接合面にごく微細な研磨残渣やパーティクルが残ると、欠陥となり接合強度や電気特性を損ないます。CMP後の超高純度な洗浄技術が不可欠です。
📌 Cuと誘電体の段差(ディッシング・エロージョン)制御
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ディッシング(Cuのへこみ)制御:Cuと誘電体では研磨速度が異なるため、配線部分のCuが周囲の誘電体よりも深く削られる現象(ディッシング)が発生します。このディッシングの深さは、接合後の電気伝導性と接合強度に直接影響するため、ナノメートル単位での厳密な制御が求められます。
2. 裏面配線形成 (BS-PDN) 向けの課題
BS-PDNは、ウェハを極限まで薄くし、その裏面に電源供給ネットワークを形成する技術です。CMPは主に、このウェハの薄膜化と裏面配線形成に貢献します。
📌 超薄膜ウェハの精密研磨
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極薄ウェハ研磨: トランジスタ層に電源を最短距離で供給するため、ウェハの厚さを500nm以下まで薄くする必要があります。このウェハ薄化(グラインディングとCMP)の際、ウェハにクラックやストレス損傷を与えずに均一に研磨する技術が求められます。
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新しいストップ層の利用: 薄化の終点(エンドポイント)を正確に制御するため、SiGeなどの特殊なエッチングストップ層を利用し、CMPスラリーがこのストップ層で高い選択性(目的の材料だけを削り、ストップ層は削らない特性)を発揮することが課題となります。
📌 裏面配線材料の研磨制御
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新規材料への対応: BS-PDNでは、従来の銅やタングステンに加え、抵抗を低減するためにルテニウム (Ru) などの新しい金属材料が導入されています。これらの新規材料に対して、効率的かつ欠陥なく配線を形成するための専用CMPスラリーとプロセスの開発が必要です。
3. 全体的な課題
これらの最先端技術の導入により、CMPプロセス全体で以下の課題が重要視されています。
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欠陥の最小化: 極めて微細な構造に対して、スクラッチ(傷)や研磨残渣を「ゼロ」に近づけることが、歩留まり向上に直結します。
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プロセス制御の高度化: 研磨レート、選択性、平坦度をウェハ全体およびチップ内のパターン密度に依存せず、均一に保つためのリアルタイム監視および制御システムの導入が不可欠です。




