800ZR/ZR+モジュールは、コヒーレント光通信技術を採用した、次世代の超高速プラガブル光トランシーバモジュールです。主にデータセンター間接続(DCI)やメトロネットワークでの長距離・大容量伝送を実現するために開発されています。
これは、従来の短距離向けトランシーバでは困難だった、高い伝送速度(800 Gbps)と長い伝送距離(数十 km ~ 数千 km)を、スイッチやルーターのポートに直接挿入できる小型のモジュールで実現することを目的としています。
1. 800ZR/ZR+ の特徴と規格
800ZR/ZR+の規格は、主に業界団体である OIF (Optical Internetworking Forum) によって策定が進められています。
特性 | 800ZR | 800ZR+ |
主要な応用 | データセンター間接続 () | メトロ/リージョナルネットワーク |
標準伝送距離 | 80 km 〜 120 km 程度 | 1000 km 以上(OpenROADM モデルなど) |
伝送技術 | コヒーレント方式(DSPによる信号処理) | コヒーレント方式(DSPによる信号処理) |
変調方式 | DP-16QAM (二重偏波 16 値直交振幅変調) など | DP-16QAM や DP-QPSK などの複数の変調方式 |
フォームファクタ | QSFP-DD800 および OSFP800 | QSFP-DD800 および OSFP800 |
主な違い | ZR は、よりシンプルな構成で、DCI 向けに相互接続性を重視。 | ZR+ は、より高出力で、伝送距離を延長するための柔軟な設定を可能とする。 |
400ZR からの進化
800ZR/ZR+ は、すでに広く普及している 400ZR 規格をベースに、さらにデータレートを倍増させたものです。主な技術的な進化は、シンボルレートの高速化にあります。
400ZR が約 60 Gbaud のシンボルレートを使用していたのに対し、800ZR は約 120 Gbaud 程度の超高速シンボルレートを採用しています。
2. 実現技術:コヒーレント通信と DSP
800ZR/ZR+ の「ZR」は (Z-Series Reconfigurable) を意味し、コヒーレント(同軸)光通信に基づいています。
コヒーレント技術
通常の光通信(直接検波)とは異なり、受信側で信号光と局所発振光を干渉させ、光の振幅、位相、偏波のすべてをデジタル信号処理(DSP)で復調します。これにより、光ファイバを伝送中に発生する以下の信号劣化を電気領域で高精度に補償することが可能となり、長距離伝送を実現します。
色分散 (CD)
偏波モード分散 (PMD)
高性能 DSPの搭載
800ZR モジュールには、このコヒーレント処理を行うために、5 nm プロセスなどの最先端の半導体プロセスで製造された高性能な DSP チップが組み込まれています。
3. 応用分野
800ZR/ZR+ は、その長距離・大容量の特性から、特に以下の分野で利用されます。
データセンター間接続 (DCI):
離れた場所に位置する大規模データセンターを、高密度かつ高速に相互接続します。これにより、GPU クラスタや生成 AI ワークロードのための巨大なデータプールを効率的に利用できます。
IP over DWDM 統合:
従来の光伝送装置(トランスポンダー)を介さず、スイッチやルーターのポートに 800ZR/ZR+ モジュールを直接挿入することで、IP 層と光層を統合します。これにより、ネットワーク構成をシンプルにし、設備投資(CAPEX)と運用コスト(OPEX)を大幅に削減できます。
メトロ・リージョナルネットワーク:
都市圏や地域間の通信事業者のバックボーンにおいて、ファイバ容量の効率的な利用とネットワークの簡素化に貢献します。
800ZR/ZR+ は、400ZR 時代に始まった「プラガブル・コヒーレント」のトレンドをさらに加速させ、ネットワークインフラの進化に不可欠な技術となっています。
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