差動ライン(4ポート測定)におけるAFR(自動フィクスチャ除去)は、単一の配線(シングルエンド)よりも複雑ですが、「モード変換(ディファレンシャルからコモンへの変換)」や「差動インピーダンス」を正確に評価するために極めて重要です。
4ポートVNA(または2ポートVNAでスイッチを使用)を用いる場合の手順と注意点を解説します。
1. 差動AFRの主なトポロジー(構成)
4ポート測定では、フィクスチャがどのように作られているかによって、ウィザードで選択する設定が変わります。
Differential 1-Port (Reflect): フィクスチャの先に差動DUTを接続する構成。フィクスチャの先端(DUT接続点)を「Open」または「Short」の状態にして測定し、フィクスチャのSパラメータを抽出します。
Differential 2-Port (Through): 2つの同一な差動フィクスチャを背中合わせ(Back-to-Back)に接続できる場合。
Split: 接続した「Thru」の状態を測定し、それを半分に割って「左側」と「右側」のフィクスチャ特性を計算します。左右対称な基板設計の場合に最も精度が出ます。
2. 差動AFRの具体的な操作手順
同軸4ポート校正: まずは4本のケーブル先端でフル4ポート校正(SOLTまたは電子校正)を完了させます。これにより、各ポート間のアイソレーションやミスマッチが補正されます。
AFRウィザードでの設定:
Topology で 「Differential (4-Port)」 を選択。
Characterization で 「1-Port」 または 「2-Port Split」 を選択します。
フィクスチャの測定:
1-Portの場合: ポート1&2(または3&4)に差動フィクスチャを接続し、先端をOpenにします。
重要: この際、2本のライン間の結合(Coupling)もAFRが自動的に計算に含めます。これが単純なデスクー(Port Extension)との大きな違いです。
ゲート(Gating)の調整:
TDR波形が表示されるので、コネクタの反射点と、DUT接続予定位置(Open点)の間にゲートを設定します。
不要な反射(コネクタの不連続性など)を適切に「窓関数」で囲むことで、純粋な配線特性だけを抽出できます。
3. 差動測定特有の注意点
① スキュー(Skew)の補正
差動ラインでは、2本の配線長がわずかに違うだけで、高周波(4.5GHz等)では位相差が生じ、差動信号がコモンモードに変換されてしまいます。
AFRは、各ポート(ポート1と2など)の電気長を個別に計算するため、物理的な長さの微差(スキュー)も自動的に補正して基準面を揃えてくれます。
② 結合(Coupling)の影響
差動配線が密結合(Close Coupling)されている場合、片方のラインの信号がもう片方に漏れます。
AFRは、フィクスチャ部分の「近端クロストーク(NEXT)」や「遠端クロストーク(FEXT)」もSパラメータとして抽出します。
これを適用(Apply)することで、「フィクスチャ内で発生している不要なモード変換」を差し引き、DUTそのものの差動特性だけを浮き彫りにできます。
③ 基準インピーダンスの設定
通常、システムインピーダンスは50Ωですが、差動では100Ω(各ライン50Ω)を基準とします。
AFR実行後、VNAの表示を 「Mixed-Mode S-parameters」 ( など)に切り替えることで、デエベディングされた純粋な差動特性を確認できます。
4. GHz帯 RFSoC評価への応用
RFSoCの差動出力(例:DAC出力)を評価する場合、基板上のマイクロストリップ線路(差動)を通って測定器に入力されます。
AFRのメリット: 基板配線の損失(Loss)と、コネクタのミスマッチを完全に取り除けるため、「RFSoCのピン直下での波形」を推測できます。
アイパターンへの影響: AFRで正しくデエベディングを行うと、時間軸での「立ち上がり時間(Rise Time)」が改善し、より正確なアイ開口(Eye Opening)を確認できます。
もし、特定のフィクスチャ(例えば、サンプリング用のプローブや特殊な変換基板)を使用されている場合は、その「厚み」や「誘電率」による分散(Dispersion)もAFRで補正可能です。
AFR後の確認として、フィクスチャ先端をOpenにした状態で Mixed-Modeのスミスチャート を確認し、差動モード(Sdd11)が綺麗に収束しているかチェックしてみてください。
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