**ボッシュプロセス (Bosch process)**とは、**DRIE(Deep Reactive Ion Etching、深掘り反応性イオンエッチング)**を実現するための、エッチングとパッシベーション(側壁保護膜形成)を高速で交互に繰り返すプロセス技術です。
この技術は、1992年にドイツのロバート・ボッシュ(Robert Bosch GmbH)社によって開発されました。シリコンウェハに垂直でアスペクト比の高い(細く深い)微細構造を形成できるため、MEMS(微小電気機械システム)やTSV(シリコン貫通電極)などの製造において、業界標準となっています。
1. ボッシュプロセスの仕組み
ボッシュプロセスは、本来エッチングが横方向にも進んでしまう「等方性エッチング」の性質を、周期的な保護膜の形成によって意図的に抑制し、垂直な「異方性エッチング」を可能にします。
プロセスは、主に以下の2つのステップを数秒程度の短い時間で交互に繰り返します。
ステップ 1: パッシベーション(保護)層の形成
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目的: 側壁を保護し、横方向へのエッチング(削れ)を防ぐ。
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ガス: C4F8(フルオロカーボンガス)などを使用。
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作用: ガスがプラズマ化され、エッチングされるシリコンの**全表面(底面と側壁)**にポリマー(テフロン系の保護膜)が薄く堆積されます。
ステップ 2: エッチング(削り取り)
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目的: 垂直方向にシリコンを深く削り進める。
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ガス: SF6(六フッ化硫黄ガス)などを使用。
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作用:
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強力なイオンが垂直方向に加速され、穴の底面にある保護膜のみを物理的に除去します。
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露出したシリコンが、フッ素ラジカルによって化学的にエッチングされます。
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側壁の保護膜は維持されるため、横方向へのエッチングは抑制されます。
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サイクル反復
この「保護」と「エッチング」のステップを交互に繰り返すことで、エッチングが深さ方向に進行し、高いアスペクト比の溝や穴が形成されます。
2. 特徴とメリット
ボッシュプロセスは、MEMS製造における最も重要な課題の一つを解決しました。
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高いアスペクト比: 深さが幅の数十倍にもなる(例:50:1以上)構造を容易に実現できます。
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垂直な側壁: ほぼ垂直(90度)な側壁を持つ構造を作製でき、微細な機械構造の設計自由度を高めます。
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高速エッチングレート: 従来のRIEに比べてエッチング速度が非常に速く、効率的な量産が可能です。
スカロップ(Scallop)
ボッシュプロセスの特徴的な副産物として、側壁にスカロップ(波状の微細な凹凸)が発生します。これは、ステップを切り替える際に、わずかに等方性エッチングが発生するために生じますが、プロセス条件の最適化により、そのサイズは極めて小さく制御されています。
この動画では、主にシリコンの深掘りRIE(Deep-RIE)技術であるボッシュプロセスの仕組みや応用例が解説されています。
「Si深堀エッチング(Deep-RIE)技術とその応用」







