LSTC(最先端半導体技術センター)やRapidusの動きとも連動し、今後の半導体設計の主軸となるチップレット(Chiplet)集積技術について、技術的な観点から深掘りして解説します。
1. チップレット技術とは
従来の半導体(モノリシックIC)は、1つの大きなシリコンダイの上にすべての機能を詰め込んでいました。これに対し、チップレット技術は「特定の機能(CPU、メモリ、RF、I/Oなど)に特化した小さなダイ(チップレット)」を個別に製造し、それらを後工程(パッケージング)で統合する手法です。
2. なぜチップレットが必要なのか(3つの技術的背景)
① 歩留まり(Yield)の向上
巨大な1チップを作ると、1箇所の欠陥でチップ全体が不良品になります。チップレット化して個々の面積を小さくすれば、欠陥の影響を最小限に抑えられ、特に2nmのような最先端プロセスにおいて歩留まりが劇的に改善します。
② ヘテロジニアス・インテグレーション(異種統合)
すべての機能を最先端プロセスで作る必要はありません。
ロジック: 2nm(最先端)
アナログ/RF: 28nmや14nm(特性が安定している旧世代)
I/O: 45nmなど
このように、各機能に最適なプロセスノードのチップを混載できるため、コストと性能の最適化が可能になります。
③ レゴブロックのような設計の柔軟性
必要な機能を組み替えるだけで、用途(AIサーバー用、車載用、通信拠点用など)に合わせた派生製品を短期間で開発できます。
3. 実装を支えるキーテクノロジー
チップ同士を接続するためには、従来のプリント基板レベルの接続では帯域が足りません。LSTCでも研究対象となっている、以下のような高密度実装技術が重要になります。
技術要素 | 説明 |
シリコン・インターポーザ | チップレット間を接続する微細配線層を持つシリコン基板。 |
TSV (Through-Silicon Via) | シリコンを垂直に貫通する電極。3D積層の要。 |
D2D (Die-to-Die) インターフェース | UCIe (Universal Chiplet Interconnect Express) などの標準規格。 |
ハイブリッド・ボンディング | 半田ボールを使わず、銅(Cu)パッド同士を直接接合する超高密度接続技術。 |
4. RF・高周波エンジニアから見た課題
RFSoCなどの設計に携わる視点では、以下の点が今後の設計の焦点になると予想されます。
SiP(System in Package)内の電磁干渉(EMI): 超高密度にチップレットが並ぶため、デジタル部からのノイズがRFチップレットに干渉する問題。
寄生成分の精密モデル化: インターポーザやバンプによる寄生容量・インダクタンスが、数GHz〜数十GHz帯の信号品質(SI/PI)に与える影響。
熱設計: 3D積層や高密度集積により熱密度が急上昇するため、熱抵抗を考慮した高周波特性の変動予測。
LSTCはまさに、これらの「チップレット間の接続規格(UCIe等への対応)」や「2.5D/3Dパッケージング技術」を日本の強みとして確立しようとしています。
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