VNAの設定において、**「IFBW(中間周波帯域幅)」と「スタート周波数(低域の下限)」**の間には、測定の安定性と物理的な制約という面で切っても切れない関係があります。
特に低域(kHzオーダー)を測定する場合、これらの設定を誤ると、測定値が不安定になったり、最悪の場合はエラー(ロック外れ)が発生したりします。
1. 低周波測定における「IFBWの制約」
VNAの仕組み上、IFBWを大きく設定しすぎると、低いスタート周波数では正しく測定できない場合があります。
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サンプリング定理とIF信号:
VNAは内部で信号をIF(中間周波数)に変換します。もし、**「スタート周波数 < IFBW」**という設定にしてしまうと、IF信号の中にDC成分や逆極性の信号が混入し、正確なベクトル検波ができなくなります。
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自動制限:
多くのVNAでは、低いスタート周波数を設定すると、IFBWの最大値が自動的に制限される(あるいは警告が出る)ようになっています。
2. 位相ノイズと低域の安定性
スタート周波数を下げるほど、信号源の「近傍ノイズ」の影響を受けやすくなります。
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IFBWを絞る必要性:
100 kHz以下の低域を測定する際、IFBWが広い(例: 100 kHz)と、信号源のふらつき(ジッタ)をすべて拾ってしまい、トレースが上下に激しく揺れます。
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推奨設定:
スタート周波数が 100 kHz以下 の場合、IFBWは 100 Hz ~ 1 kHz 程度 に絞るのが一般的です。これにより、低域でのSパラメータ(特に位相)が安定します。
3. TDR(タイムドメイン)測定における黄金律
TDRモードを使用する場合、スタート周波数とIFBW、そして「ステップ(ポイント間隔)」の関係が極めて重要です。
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調和グリッド(Harmonic Grid):
正確なTDR波形を得るためには、各測定ポイントの周波数が「スタート周波数の整数倍」である必要があります。
例: Start = 100 kHz なら、次は 200 kHz, 300 kHz ・・・ と並ぶのが理想です。
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IFBWと掃引時間のトレードオフ:
TDRで長距離(あるいは高分解能)を測るためにポイント数を増やす(例: 1601点)と、低域を安定させるためにIFBWを絞った際、掃引時間が数秒〜数分に跳ね上がります。
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対策: 低域のインピーダンス精度がそこまで重要でない場合は、スタート周波数を少し上げ(例: 10 MHz)、IFBWを広げることで、高速なリアルタイム更新が可能になります。
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4. まとめ:設定のガイドライン
回路網、伝送ラインなどの評価において推奨される設定バランスは以下の通りです。
| 測定目的 | スタート周波数 | 推奨IFBW | ポイント数 | 理由 |
| 一般的なSパラメータ | 10 MHz | 10 kHz ~ 100 kHz | 201 ~ 401 | 速度優先。位相も安定。 |
| 精密なTDR (DC結合) | 100 kHz | 100 Hz ~ 1 kHz | 801 ~ 1601 | 低域のDC外挿精度を確保。 |
| デエベディング検証 | 10 MHz | 1 kHz ~ 5 kHz | 801以上 | 補正計算によるノイズ増幅を抑える。 |
注意点:
もし、スタート周波数を下げた状態で「Trace Noise」が気になる場合は、IFBWをさらに一段階絞るか、**「アベレージング(平均化)」**を併用してください。特にUSB VNAはPCのノイズ環境に左右されやすいため、低域では少し慎重なIFBW設定が「確実な値」への近道です。
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