DCバイアスティー(Bias-T)を挿入する位置は、「可能な限りDUT(デバイス)に近い場所」に配置するのが、高周波測定における鉄則です。
VNAに近い場所に置いてしまうと、多くの物理的・電気的なデメリットが生じます。
1. なぜ「DUTに近い」方が良いのか
基準面(Reference Plane)の安定性:
VNAとDUTの間に長いケーブルがあり、そのVNA側にBias-Tを置くと、ケーブル全体にDCバイアスが重畳されます。ケーブルを動かした際の位相変化や損失の変動が、DC重畳状態ではより複雑になり、校正の精度を維持しにくくなります。
測定系の帯域と精度の確保:
Bias-T自体が持つ寄生成分(LやC)によるミスマッチは、DUTに近いほど「デエベディング(除去)」や「ポート延長」で補正しやすくなります。間に長いケーブルを挟むと、そのケーブルの反射とBias-Tの反射が干渉し合い、S11に激しいリプルが生じます。
2. 「VNAに近い」場合に起こる深刻な問題
ケーブルのDC特性による影響:
もし同軸ケーブルが劣化していたり、コネクタの接触が不安定だったりする場合、DC電流が流れることで微小な熱が発生し、ケーブルの電気長が変化することがあります。これは4.5GHz帯のような精密測定では位相エラーとして現れます。
サージと反射の増幅:
Bias-TからDUTまでの距離が長いと、DC電源のON/OFF時に発生する過渡的なサージが長いケーブルを伝わって反射を繰り返し、予期せぬ高電圧がDUTに印加されるリスクが高まります。
3. 配置のレイアウト例
推奨されるのは以下の構成です。
VNAポート → (長い高品質ケーブル) → Bias-T → (極短ケーブルまたはアダプタ) → DUT
4. 注意すべき例外と運用のコツ
物理的な重さとストレス:
Bias-Tは重いことが多いため、DUT(特にプローブステーションなど)の直近に置くと、重みでコネクタや基板を傷めることがあります。この場合は、Bias-Tを机に固定した上で、そこから10〜20cm程度の「高品質なセミリジッド/フレキシブルケーブル」でDUTに繋いでください。
校正のポイント:
校正(Calibration)は必ずBias-Tを含めた状態で行ってください。
具体的には、Bias-TのDUT側ポートを基準面として、Open/Short/Loadを接続して校正します。これにより、Bias-T内部の損失や位相遅延を完全にキャンセルできます。
まとめ
CNT-TFTのような繊細なデバイスを扱う場合、「Bias-TはDUTのすぐそばに置く」ことで、不要な反射や環境ノイズの飛び込みを最小限に抑えられます。
もし、スペアナの例のように「見えない信号(リーケージ)」を警戒されるのであれば、Bias-TのDCポート側に低周波のパスコンやフェライトビーズを追加して、DUT直近でさらに「電源の掃除」をするのも有効な手です。
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