AFR(Automatic Fixture Removal)は、校正キット(SOLTなど)が接続できない基板上の配線やテスト・フィクスチャの特性を、「Open」や「Thru」の測定データから数学的に抽出して取り除く非常に便利な機能です。
一般的なVNA操作手順を整理します。
1. 事前準備:同軸端でのフル校正
AFRを実行する前に、まずは「フィクスチャの入り口(ケーブルの先端)」までを完璧に校正しておく必要があります。
手順: ケーブルのSMA/3.5mm端で、メカニカル校正キット(SOLT)または電子校正モジュール(ECal)を使用して Full 2-Port Calibration を完了させます。
状態: この時点で、VNAの基準面はケーブルの先端にあります。
2. AFRウィザードの起動
VNAのメニューからAFRを立ち上げます。
パス: Cal > Fixture > AFR... (または Setup メニュー内)
ウィザードの選択: 「Setup App」が起動し、対話形式で進める画面が表示されます。
3. フィクスチャ構成(Topology)の選択
取り除きたいフィクスチャがどのような構造かを選択します。ここが最も重要なステップです。
1-Port (Reflect): フィクスチャの先にDUTを繋ぐ「片側」のみの場合。終端を「Open」または「Short」にして測定します。
2-Port (Through): 入力と出力の両方にフィクスチャがある場合。
2-Port Split: 左右対称、あるいは既知の2つのフィクスチャを突き合わせ(Thru)にして測定できる場合。
Differential: 差動ライン(4ポート測定)の場合も、同様に1-Port/2-Portを選択します。
4. 特性抽出(Characterization)の実行
フィクスチャ単体のデータを取得します。
基準面の指定: ケーブル先端に何も繋がない(Open)、または特定の基準片を繋いで Measure を押します。
フィクスチャの測定: ケーブルの先に「取り除きたいフィクスチャ」を接続し、その先端を Open(または既知のThru)の状態にして測定します。
計算: VNAが時間領域(TDR)解析を行い、コネクタからDUT手前までの損失と位相遅延を自動的に計算します。
Tip: この際、ゲート(Gating)の設定画面が出ることがあります。コネクタの反射とDUT位置の反射を正しく分離できているか、グラフ上で確認してください。
5. 補正の適用(Apply)
抽出した特性を「デエベディング・ファイル」として保存・適用します。
ファイルの保存: .s2p(1ポートなら .s1p)形式でフィクスチャの特性データが保存されます。
Apply: Apply Correction をクリックすると、VNAの補正回路にこのファイルが読み込まれ、リアルタイムでフィクスチャの影響が差し引かれたデータが表示されるようになります。
6. 確認(Verification)
AFRが正しくかかっているかを確認する方法です。
Openを確認: フィクスチャの先端(DUTを載せるパッドなど)を「Open」にした状態で、スミスチャートの右端(無限大)に1点に集まっていれば、位相補正(Deskew)と損失補正が正しく機能しています。
TDRで確認: タイムドメイン表示にして、フィクスチャのコネクタ反射が消え、基準面がDUTの直前に移動していることを確認します。
実務上のアドバイス:RFSoC評価の場合
GHz帯の評価であれば、AFRで生成された .s2p ファイルを保存しておき、「ADS(Advanced Design System)」などのシミュレータに持ち込むことも可能です。これにより、実測データとシミュレーションの基準面を完全に一致させることができます。
もし、フィクスチャの長さが左右で異なる(Skewがある)場合は、2-Port測定時にそれぞれのポートで個別にAFRを実行し、.s2p を2つ用意して適用するのが確実です。
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