AiC(Antenna in Chip)は、アンテナ素子を半導体パッケージ(AiP)の中に収めるだけでなく、さらに進んでシリコンダイ(半導体チップそのもの)の内部に直接形成する技術です。
波長がミリ単位からサブミリ単位(テラヘルツ波:100GHz〜)へと短くなる6G時代において、究極の低損失・小型化を実現する手法として注目されています。
1. AiP と AiC の決定的な違い
特徴 | AiP (Antenna in Package) | AiC (Antenna in Chip) |
アンテナの場所 | パッケージ基板(RDL等)上 | 半導体チップ(Die)の最上層 |
接続距離 | 数百μm 〜 数mm | ほぼゼロ (数μm) |
主な周波数帯 | 28GHz 〜 100GHz (ミリ波) | 100GHz 〜 300GHz+ (サブテラヘルツ) |
主な損失要因 | パッケージとチップ間のバンプ等 | シリコン基板の導電性による損失 |
2. なぜ AiC が「究極」と言われるのか
伝送損失の「消失」:
高周波信号において、チップからパッケージへ信号を渡す「バンプ」や「ビア」は非常に大きな抵抗(寄生インダクタンス・容量)となります。AiCではアンテナが回路の直上にあるため、これによる減衰を実質的にゼロにできます。
位相制御の超高精度化:
数百個の素子を並べる大規模なフェーズドアレイ構成において、チップ内部で全ての配線長を極限まで等しく制御できるため、ビームフォーミングの精度が飛躍的に向上します。
製造コストの低減(量産時):
標準的なCMOSやSiGe(シリコンゲルマニウム)プロセスの中でアンテナも同時に作り込めるため、個別のアンテナ実装工程を省略できる可能性があります。
3. 解決すべき技術的ハードル
AiCの実用化には、シリコン特有の課題があります。
シリコン基板の損失: 一般的なシリコン基板は導電性があるため、アンテナから放射されたエネルギーが基板に吸収(エディ電流損失)されやすい性質があります。これを防ぐために、高抵抗シリコン(HR-Si)の使用や、アンテナ直下のシリコンを削り取る(微細加工技術)などの工夫が必要です。
放射効率と帯域幅: チップの最上層(メタル層)は非常に薄いため、十分な放射効率を確保するのが難しく、高度な電磁界シミュレーションによる最適化が不可欠です。
4. 主なアプリケーション例
6G 超高速通信: 100Gbpsを超えるモバイルバックホールや近距離の超高速データ転送。
高分解能レーダー: 車載用や産業用の高精度なイメージング・センシング。
生体センシング: 非侵襲での血糖値測定など、テラヘルツ波の特性を活かした小型センサー。
この領域では、D-band (110-170GHz) や H-band (220-330GHz) といった超高周波帯での特性評価が重要になります。
下記資料では「AiC (Antenna in Chip)」について詳しく解説されています。
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