Marvell(マーベル)の車載イーサネットPHY(Brightlaneシリーズ:88Q4364 等)において、IEEE 802.3ch (MultiGBASE-T1) 準拠性試験用のテストモード (Test Mode 1-6) を起動するには、通常 MDIO (Management Data Input/Output) レジスタ経由で特定の値を書き込む必要があります。
Marvellチップは、標準的なIEEEレジスタ(Clause 45)に加えて、ベンダー固有のレジスタ設定が必要な場合があるため、以下の手順が一般的です。
1. テストモードの定義 (IEEE 802.3ch準拠)
それぞれのモードは、VNAやオシロスコープでの特定の測定項目に対応しています。
テストモード | 信号の内容 | 主な測定項目 |
Mode 1 | 送信機ドループ (Transmitter Droop) | 低域遮断特性の評価 |
Mode 2 | 送信機ジッタ (MASTER) | クロックの安定性(マスター側) |
Mode 3 | 送信機ジッタ (SLAVE) | クロックの安定性(スレーブ側) |
Mode 4 | 送信機線形性 (Transmitter Linearity) | PAM4のシンボル間隔の正確性 |
Mode 5 | 送信機出力PSD (Transmitter PSD) | スペクトラム密度、放射ノイズ |
Mode 6 | 送信機フル出力レベル | 最大振幅の確認 |
2. レジスタ設定の手順
MarvellのPHYをテストモードに移行させるには、通常以下のレジスタ(Device 1: PMA/PMD)を操作します。
A. 基本的なレジスタアドレス
Register Address: 1.2308 (16進数で 0x0904 付近、チップにより異なる場合があります)
設定値:
Bit を使用してモードを選択します。
001 = Test Mode 1
010 = Test Mode 2
...
110 = Test Mode 6
B. 書き込み例 (mdio-tool 等を使用する場合)
Linux環境やデバッグツールからMDIOアクセスを行う例です(88Q4364の場合を想定)。
# Test Mode 4 (Linearity) を起動する場合
# Device 1, Register 0x0904 に 0x8000 (Mode 4に対応するビット) を書き込む例
mdio-write <interface> <phy_addr> 1 0x0904 0x8000※正確なレジスタアドレスとビット配置は、Marvellから提供される Hardware Spec (Register Map) または Application Note (Compliance Test Guide) を必ず参照してください。NDA(秘密保持契約)下のドキュメントに詳細が記載されています。
3. 注意点:テストモード起動時の状態
リンクダウン: テストモードに入ると、通常のデータ通信(イーサネットリンク)は切断されます。
リセット: 通常、電源の再投入(Power Cycle)またはソフトウェアリセット(Control RegisterのBit 15を1にする)を行うまで、テストモードは維持されます。
周波数選択: 802.3chは 2.5G/5G/10G のマルチスピードであるため、テストモードを入れる前に「どの速度でテストするか」を別のレジスタで固定(Force Speed)しておく必要があります。
4. 測定のヒント
Marvellの評価ボードで 2.92mm-HFM変換アダプタ を使用して測定する場合、以下の確認を行ってください。
VNAでのAFR適用: 評価ボード上のSMA/HFMコネクタからチップまでの配線損失を除去(De-embed)してください。MarvellのEVBは非常に高品質ですが、10GHz帯では数dBの減衰が発生します。
クロック設定: Test Mode 2/3(ジッタ測定)では、チップが外部水晶(Crystal)と内部PLLのどちらを使用しているかで結果が変わります。設計通りの構成になっているか確認してください。
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