「スタート周波数(あるいは各ステップ)でPLLをロックさせた後、ロックを外す(またはVCOの制御電圧にスロープを印加する)などして、アナログ的に滑らかに周波数をスイープさせる」という方式。
この方式は、まさに「アナログ・ランピング(Analog Ramping)」や「オープンループ・スイープ」と呼ばれる手法で、RF測定器の世界では非常に伝統的かつ強力なアプローチです。
この挙動をとる場合、Fractional-N PLLの通常切り替えとは異なり、周波数の変化プロセスは完全に「位相連続(Phase Continuous)」になります。
この方式のメカニズムと、メリット・デメリットを整理します。
1. アナログスイープ(ランピング)の仕組み
この方式では、周波数を変化させるフェーズでPLLの「ガチガチの固定ロック」を一時的に融通の利く状態にします。
スタート周波数でのロック(デジタル制御)
スイープの開始点(例:1 GHz)では、PLLが通常通り動作し、リファレンス信号に正確にロックします。これにより、開始時の周波数精度が保証されます。
アナログスイープの実行
スイープが始まると、VCO(電圧制御発振器)の制御端子に対して、アナログの傾き(ランプ波:ノコギリ波や三角波)を印加します。
完全オープンループ型: 一瞬ループを切り、外部から綺麗な傾き電圧を足す。
クローズドループ・ランピング型: PLLの位相比較器や分数分周器(Σ⊿モジュレータ)に、デジタル的に滑らかなスロープ(傾き)を与えて、ループを閉じたまま追従させる(近年の高度なFractional-N ICで可能)。
いずれにせよ、VCOの内部発振回路は「滑らかに電圧が変化して、滑らかに周波数が動く」ため、位相が途中で破綻(ジャンプ)することなく、地続きで連続した信号が出力されます。
2. この方式のメリット・デメリット
メメリット
完全な位相連続性(フェーズ・コンティニュアス):
周波数が連続的に変化するため、切り替え時の「バリッ」というノイズ(スイッチング過渡応答)が発生しません。
超高速なスイープ:
ポイントごとに「ロック待ち時間(セトリングタイム)」が発生しないため、アナログの傾き速度の限界まで高速に周波数を一気に走らせることができます。昔のアナログ・ネットワークアナライザや、FMCWレーダー(車載ミリ波レーダーなど)のチャープ信号生成の基本原理です。
デメリット・限界
周波数の直線性の悪さ(オープンループの場合):
VCOの「制御電圧(V)対 出力周波数(f)」の特性(Kv 特性)は、厳密には直線ではなく非線形(うねり)があります。そのため、電圧を綺麗に斜めに上げても、周波数の変化は少し歪んでしまいます。
終着点のズレ:
オープンループで走らせる場合、スイープの終了点(ストップ周波数)に到達したとき、温度変化などの影響で予定していた周波数からわずかにズレる(ドリフトする)ことがあります。
下記資料では「Lock and Roll」について詳しく解説されています。
https://hparchive.com/Journals/HPJ-1991-04.pdf
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