1path 2port(フル2ポートではなく、正方向のS11とS21のみ)の測定機能、すなわちスカラー/ベクトル・ネットワーク・アナライザ機能(VNA)を内蔵、あるいはオプションで追加できるローコストなベンチトップ・スペクトラム・アナライザは、現在いくつかのアジア系計測器メーカーから非常にコストパフォーマンスの高いモデルがリリースされています。
「1path 2port(S11/S21)測定が可能なローコスト・スペアナ(VNA機能付き)」の選択肢をまとめました。
1. SIGLENT (シグレント) :SVA1000X シリーズ
(外付けブリッジなしでのS11測定、および画面上でのS11/S21の同時表示・測定)をローコストで最もスマートに満たせるのが、このSVA1000Xシリーズです。
ハードウェア構造: * 本体に方向性結合器(ブリッジ)が内蔵されています。
ポート1(TG出力/反射測定ポート)にDUTを接続するだけで、外付けブリッジなしでそのままS11(リターンロス・スミスチャート)が測定可能です。
同時測定:
VNAモードにおいて、画面を分割(マルチトレース・マルチウィンドウ)し、S11とS21を同時に表示・測定することが可能です。フィルターやアンプの入力反射特性(S11)と通過特性(S21)を一度に確認する用途に最適です。
主なモデル:
SVA1015XSIGLENT SVA1000Xシリーズ スペクトラムアナライザ 9kHz~1.5GHz319,000円詳しく見るT&M 即納ストアで購入: 100 kHz 〜 1.5 GHz(実売:約20万円台後半〜)
SVA1032XSIGLENT SVA1000Xシリーズ スペクトラムアナライザ 9kHz~3.2GHz726,000円詳しく見るT&M 即納ストアで購入: 100 kHz 〜 3.2 GHz(実売:約40万円台〜)
SVA1075XSIGLENT SVA1000Xシリーズ スペクトラムアナライザ 9kHz~7.5GHz1,727,000円詳しく見るT&M 即納ストアで購入: 100 kHz 〜 7.5 GHz
注意点: 1path 2port仕様(逆方向のアイソレーションはない)のため、S22やS12を測定したい場合はDUTを物理的に逆向きに接続し直す必要があります。
2. RIGOL (リゴル) :RSA3000N / RSA5000N シリーズ(要注意)
外付けアクセサリ(ブリッジ)を前提とすれば選択肢に入ります。
ハードウェア構造:
カタログ上は「VNAモード搭載」と謳っていますが、トラッキングジェネレータ(TG)出力ポートにブリッジが内蔵されていないため、S11(反射)を測定する際には、外付けのVB1032 / VB1080などの「VSWRブリッジ(方向性結合器)」が必須となります。
同時測定の制限:(できない)
内部リレーによる自動切り替えや完全な2ポート同時サンプリング構造にはなっていないため、S11とS21をワンショットで同時に測定・リアルタイム更新することはできません。モードと接続を切り替えて個別に測定する必要があります。(校正も)
メリット: スペアナとしての基本性能は優秀なため、スペアナ主目的+アクセサリを足して時々S11またはS21を測る、というスタイルに向いています。
まとめ:どちらを選ぶべきか?
ブリッジなしで手軽に、かつS11/S21を同時に画面で見たい場合
SIGLENT SVA1000Xシリーズ一択となります。余計な外付けパーツが不要で、ベンチトップのフル機能VNAに近い挙動をこの低価格帯で実現しています。
スペアナ(特にリアルタイム・スペアナ)としての性能を最優先したい場合
RIGOL RSA3000N/5000Nシリーズ(+純正またはサードパーティ製の外付けVSWRブリッジを別途購入)というアプローチになります。
正確な仕様へのご指摘、ありがとうございました。
補足:SIGLENT SSA3000X-R シリーズ
同社の通常のリアルタイムスペアナ(SSA3000X-R)も、オプション(ライセンス)を追加することなしにVNAモード(S11/S21)が使用(標準機能)できます。
選定時の注意点
キャリブレーション・キット(Cal Kit)の予算
VNAモードで正確なS11/S21を測定するには、OSL(Open-Short-Load)およびThroughによるキャリブレーションが必須です。本体がローコストでも、メカニカル・キャリブレーション・キット(SMA型やN型)が別売り(数万円〜)となるケースが多いため、本体と一緒に予算に組み込む必要があります。
簡易スペアナ+TGとの違い
さらに予算を下げようとして「TG(トラッキングジェネレータ)付きの最廉価スペアナ」を選ぶと、S21の振幅(ゲイン・ロス)しか測れず、S11(反射)の測定には外付けの方向性結合器(ディレクショナルクーラ)やVSWRブリッジが必要になります。また、位相(スミスチャート)は見られません。
「S11とS21をシームレスに、かつスミスチャート等も含めてスマートに測りたい」という場合は、上記で挙げたSVA1000Xのような「VNAモード対応機」を強くおすすめします。
ご予算や、主に測定したい周波数帯(例えば2.4 GHz/5 GHz帯のWi-Fiまでカバーしたい、あるいは数GHz前半で収まるなど)に合わせて検討してみてください。
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