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伝達インピーダンス測定における接地方法とシールド効果の関係

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この記事では、シールドケーブルの接地方法がシールド効果に与える影響について解説します。

接地方法とシールド効果の関係

シールドケーブルの接地方法には、シールドの端を 360°で接続する 360°接地と、編組線を束ねて 1 か所で接続するピッグテール接地の 2 通りの方法があります。

この接地方法の違いによって、シールド層に流れるリターン電流の経路が変化します(図1)。

図1 接地方法によるシールドの電流の経路

図1 接地方法によるシールドの電流の経路

シールドケーブルのシールド効果は、中心導体を流れる信号電流と、シールド層を流れるそのリターン電流の打ち消しによって生じます。つまりリターン電流がシールド層に多く流れるほど、シールド効果が高くなるということです。

360°接地

360°接地では、シールドとコネクタのハウジングが全周にわたって接続されるため、接地箇所のインダクタンスが最小になります。これをリターン電流の観点で見ると、インダクタンスが小さいため、リターン電流がシールド層により多く流れ、それによって高いシールド効果が得られます。

この 360°接地はバックシェルやケーブルグランドなどの専用の部品が必要で、加工に手間がかかります。そのため、汎用的に使用されるというよりも、高周波回路やノイズ対策のように高いシールド効果が必要とされる場面で使用されます。

ピッグテール接地

ピッグテール接地では、シールドの編組を束ねて撚り、その 1 本の線をコネクタのハウジングや機器のフレーム GND(FG)に接続します。

ピッグテール接地は加工が容易で安価なため、低周波のアナログ信号や制御盤内部など汎用的に使用されています。

一方でシールド効果の観点で見ると、シールド層を流れるリターン電流が 1 本の線に集中するため、360°接地よりも大きなインダクタンスを持ちます。

このインダクタンスによって、周波数に比例してインピーダンスも大きくなり、高周波になるほどシールド効果も低下していきます。

伝達インピーダンスによるシールド効果の比較

接地方法によるシールド効果の違いを伝達インピーダンスで比較します。

伝達インピーダンスとシールド効果

伝達インピーダンスは、シールド層(外導体)に流れる電流と、その電流がシールド内側(中心導体)に生じさせる電圧の比を、単位長さあたりで表した量で、単位は mΩ/m で表します。

供試ケーブル(CUT:Cable Under Test)の伝達インピーダンスが大きいほど、シールド内側に大きい電圧が生じるため、CUT のシールド効果は低いということになります。

つまり、接地方法によるシールド効果の違いは、伝達インピーダンスの差として比べることができるということです。

注入治具の構成

注入治具では、注入線の外導体を CUT のコネクタシェルに接続します(図2)。注入線の中心導体は、両端の端末の間に沿わせます。

図2 注入治具のリターン電流の経路

図2 注入治具のリターン電流の経路

この構成では注入線のリターン電流が CUT のシールド層を流れますが、ここで接地方法が違うことでリターン電流の流れ方が変化し、それによって伝達インピーダンスに差が生じます。

360°接地では、リターン電流のインダクタンスが小さいため、接地箇所による伝達インピーダンスの上昇は限定的です。

一方でピッグテール接地では、ピッグテールのインダクタンスが大きいため、伝達インピーダンスは周波数に比例して大きくなります。

したがって、ピッグテール接地の伝達インピーダンスを Zt1Z_{t1}、360°接地の伝達インピーダンスを Zt2Z_{t2} とすると、伝達インピーダンスの差 Δ\Delta は周波数が高くなるほど大きくなります。

Δ=20log⁡10(Zt1Zt2)\Delta=20{\log}_{10}\left(\frac{Z_{t1}}{Z_{t2}}\right)

なお今回の実験では、注入線の外導体と CUT のコネクタシェルを折り返した銅箔テープとクリップで簡易的に接続しました。より正確な実験を行うのであれば、金属パネルを介して注入線と CUT の GND 同士を低インピーダンスで接続する必要があります。

供試体と測定系

今回は、接地方法やシールド層数が異なる CUT で伝達インピーダンスを比較します(表1)。長さはいずれも約 30 cm です。

表1 CUT の条件

表1 CUT の条件

RG58 はシールド層の編組が 1 層、RG223 は編組が 2 層のシールドケーブルです。ピッグテール接地の CUT は、RG58 を分解して、編組を撚って BNC パネルジャックに 1 か所で固定しています。

測定系は、信号発生器とスペアナの組み合わせで、100 kHz〜100 MHz の 61 点を測定しました。

接地方法の比較

ここでは RG58 の接地方法の違いによる伝達インピーダンスの差を比較します。

図3 RG58 の接地方法による伝達インピーダンスの比較

図3 RG58 の接地方法による伝達インピーダンスの比較

360°接地の伝達インピーダンスは 100 kHz〜1 MHz で 46〜55 mΩ/m であるのに対して、ピッグテール接地の伝達インピーダンスは周波数に比例して上昇し、10 MHz では約 5,760 mΩ/m に達しています。

ピッグテールのインダクタンス

伝達インピーダンスの測定結果から、ピッグテールのインダクタンス(jωLj\omega L)を見積もることができます。

伝達インピーダンスを ZtZ_{t}、CUT の長さを ll、周波数を ff とすると、ピッグテールのインダクタンス LL は以下の式で概算できます。

L=Zt×l2πfL=\frac{Z_{t}\times l}{2\pi f}

この概算式をもとにした 1〜10 MHz の範囲のインダクタンスは、両端 2 本のピッグテールの合計で約 25 nH となります。

ピッグテールの長さは約 3 cm で、1 本あたりでは約 13 nH、1 mm あたりでは約 0.43 nH となります。この値は、ピッグテールのインダクタンスの目安とされる約 1 nH/mm よりは小さな値です。

接地方法による差

360°接地とピッグテール接地の伝達インピーダンスの差は周波数とともに大きくなり、3 MHz 以上の範囲で 30 dB 以上となります。

そしてこの差(dB)は、そのままシールド効果の低下(dB)として読み取ることができます。つまり、RG58 の両端をピッグテール接地にすると、シールド効果は 3 MHz 以上の範囲で 30 dB 以上低下するということです。

ケーブル長の影響

ただし 30 dB 以上という値は、長さ約 30 cm の CUT に限定される結果です。その理由は、伝達インピーダンスの値が長さによって変化するためです。

伝達インピーダンスは、結合区間全体のインピーダンスを CUT の長さで割って求めます。ここで CUT の長さとケーブル本体のインピーダンスは比例関係にありますが、接地部分のインピーダンスは長さによらず一定であり、CUT が長くなるほど伝達インピーダンスに占める接地部分の割合は小さくなります。

そして、360°接地とピッグテール接地の違いは、この接地部分にあります。つまり、ケーブルが長くなるほど、ピッグテール接地によるシールド効果の低下(dB)は小さくなるということです。

シールド効果の改善方法の比較

シールド効果を高める方法として、接地方法以外にシールド層数を変更する方法があります。

ここでは RG58 と RG223 で伝達インピーダンスを比較し、2 つの方法のどちらでシールド効果がより大きく改善するかを確認します。

編組 2 層の効果

シールド層の編組を 2 層にすると、被覆率が高くなることで伝達インピーダンスが下がります。

ただしこの低下要素は周波数によって異なり、低い周波数では直流抵抗分によって、高い周波数では編組の隙間から漏れる磁界が減ることによって伝達インピーダンスが低下します。

RG58 と RG223 の比較

図4 RG58 と RG223 の伝達インピーダンスの比較

図4 RG58 と RG223 の伝達インピーダンスの比較

図4 は、両端を 360°接地にした RG58 と RG223 の伝達インピーダンスの周波数特性です。

RG223 の伝達インピーダンスは、100 kHz〜1 MHz で RG58 より 9〜11 dB 低くなっていますが、それより高い周波数では、層数による伝達インピーダンスの差は読み取ることができませんでした。

この理由は、ケーブル長の影響と注入治具の構成によるところが大きいと考えられます。

特に治具の構成については、金属パネルなどで注入線と CUT の GND 同士を低インピーダンスで接続すれば、1 MHz 以上の範囲でも伝達インピーダンスの差を読み取ることができると思われます。

参考までに、他の文献によると 2 層化による伝達インピーダンスの低下は 1〜100 MHz で 10〜20 dB とされています。

2 つの方法の比較

図5 360°接地に変更した場合と RG223 に変更した場合の改善量の比較

図5 360°接地に変更した場合と RG223 に変更した場合の改善量の比較

図5 は、ピッグテール接地を 360°接地に変更した場合(接地方法)と、RG58 から RG223 に変更した場合(シールド層数)の、伝達インピーダンスの改善量(dB)を比較したものです。

約 0.2 MHz より低い周波数では、編組 2 層に替える方法の改善量が若干大きいですが、3 MHz 以上の範囲では接地方法による改善量が 30 dB 以上となり、シールド層数よりも改善量が大きいことが一目瞭然です。

つまり、高い周波数ではケーブルそのものを変更するよりも、接地方法を変更するほうがシールド効果を大きく改善できるということです。

ただし、これらの周波数特性は長さ約 30 cm の CUT での測定値です。ケーブルが長くなるほど接地方法による改善量は小さくなり、2 つの方法の改善量が入れ替わる周波数も高い周波数側へと移ります。

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