USB PDのCCラインで採用されているBMC(Biphase Mark Coding)は、データ信号とクロック信号を一つにまとめた「自己クロック型」の符号化方式です。
電子回路において、送信側と受信側でタイミング(同期)を合わせることは非常に重要ですが、BMCはその問題をスマートに解決しています。
1. BMCの基本原理
BMCの最大の特徴は、「ビットの境界(周期の開始点)で必ず電圧を反転させる」というルールにあります。
ビット「1」の場合:
ビット周期の真ん中でも電圧を反転させます。
ビット「0」の場合:
ビット周期の真ん中では電圧を反転させず、一定のまま保ちます。
この仕組みにより、受信側は「電圧が変化したタイミング」を見るだけで、クロック(周期)とデータ(0か1か)を同時に抽出できます。
2. BMCがUSB PDに採用された理由
なぜ、一般的なUARTやSPIではなくBMCが選ばれたのでしょうか。
1線での双方向通信:
CCラインという限られた1本の線で、高信頼なデジタル通信を行うのに適しています。
極性に依存しない:
電圧の「高い・低い」そのものではなく「変化の有無」で判断するため、微小な電位変動やノイズの影響を受けにくい特性があります。
回路の簡素化:
受信側で複雑なPLL(位相同期回路)を使わなくても、エッジ検出だけでデータの復元が可能です。
3. 通信のスペック
USB PDの仕様書に基づき、実際の物理層では以下のようなパラメータで動作しています。
ビットレート:
論理しきい値: 受信側のコンパレータで電圧の「揺れ」を判定します。
パケット構造: データの前後には、プリアンブル(同期用信号)とCRC(エラー検知)が付加され、情報の正確性を担保しています。
4. 波形のイメージ
オシロスコープでCCラインを観測すると、一見ランダムな矩形波に見えますが、周期ごとに必ずエッジ(立ち上がり・立ち下がり)が存在することが確認できます。
T = ビット周期
エッジ間隔が T/$: 論理「1」
エッジ間隔が T: 論理「0」
このように、時間の長さ(インターバル)を測ることでデコードが行われます。ハードウェアエンジニアの視点では、非常に堅牢で実装効率の良いプロトコルと言えます。
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