トレンチ(溝)側壁の保護膜厚の制御は、半導体プロセスにおいて「垂直なエッチング形状(異方性)」を維持し、サイドエッチングやボーイング(腹膨れ)を防ぐための極めて重要な工程です。
主に「デポ・エッチ(交互)」方式か、「その場(in-situ)生成」方式かによって制御の考え方が異なります。
1. 制御の主な手法
トレンチの深さに応じて均一な膜厚を維持するために、以下の手法が使われます。
A. ボッシュプロセス(Bosch Process)での制御
シリコンの深掘り(TSVなど)で使われる手法で、「成膜ステップ」と「エッチングステップ」を数秒おきに繰り返します。
制御因子: C4F8 などの堆積ガスの流量と供給時間。
膜厚の決まり方: 堆積時間を長くすれば保護膜(フッ素系ポリマー)は厚くなりますが、厚すぎると底部のエッチングが進まず、スカラップ(側壁の凹凸)が大きくなります。
B. 反応生成物による側壁保護(In-situ Passivation)
エッチングと同時に、ガス反応によって側壁に薄膜を形成する方法です。
制御因子: ガス比率(例:HBr/O2 における O2 添加量や、SiCl4/O2 系の比率)。
膜厚の決まり方: 酸素濃度を高めると SiOx 系の強固な保護膜が厚く形成されます。これはナノメートルオーダーの精密な制御に適しています。
2. 膜厚制御に影響を与える重要パラメータ
側壁の保護膜は「ただ厚ければ良い」わけではなく、底部の膜だけをイオンで除去しつつ、側壁を守る絶妙なバランスが必要です。
パラメータ | 側壁保護膜への影響 |
ウェハ温度 | 温度が低いほどポリマーが堆積しやすく、膜厚は厚くなる(極低温エッチングなど)。 |
バイアスパワー | 高すぎると側壁へのイオン衝突が増え、保護膜が削られて薄くなる。 |
ガス圧力 | 圧力を上げると平均自由工程が短くなり、側壁への堆積種(ラジカル)の供給量が増える。 |
アスペクト比 | 溝が深くなるほど(ARが高いほど)、底の方に堆積ガスが届きにくくなり、膜厚が不均一になる。 |
3. 最新の制御技術:ALE (Atomic Layer Etching)
最近の超微細構造では、ALE(原子層エッチング)が活用されます。
自己停止反応: 原子一層分だけの修飾層を作り、その後余剰分を除去するため、ナノレベルで正確な保護膜制御が可能です。
メリット: 従来のプラズマエッチングでは困難だった、数nm単位の寸法精度(CD制御)が可能になります。
4. 膜厚不足・過剰による失敗例
膜厚不足(Under-passivation): 側壁が削られ、ボーイング(溝の中央が膨らむ)や、隣のトレンチとの突き抜けが発生します。
膜厚過剰(Over-passivation): 溝の入り口がふさがる(クロージャー)、あるいは底部のエッチングが止まる(エッチストップ)が発生します。
次のアクションとして
それにより、最適なガス種や温度帯の推奨値が異なります。
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