ノートン等価回路(Norton's equivalent circuit)とは、複数の電源や抵抗(インピーダンス)が含まれた複雑な線形回路を、1つの「理想電流源」と1つの「並列抵抗(またはアドミタンス)」だけで構成される極めてシンプルな回路に置き換える手法です。
回路解析を大幅に簡素化できるため、電気・電子工学、テブナンの定理と並んで最も重要な基礎理論の1つです。LSIの入出力マクロモデリング(高速シグナルインテグリティ解析など)や、高周波回路の設計でも広く応用されています。
1. ノートン等価回路の基本構成
任意の複雑な2端子回路(線形回路)は、端子から外側を見たとき、以下の2つの要素が並列に接続された等価回路に集約できます。
IN(ノートン等価電流 / 短絡電流): 回路の出力端子(A-B間)を完全に短絡(ショート)させたときに、その短絡経路に流れる電流です。
RN(ノートン等価抵抗) / ZN(等価インピーダンス): 回路内部の独立電源をすべてゼロ(電圧源は短絡、電流源は開放)にした状態で、出力端子から回路側を見込んだときの合成抵抗です。
※テブナン等価抵抗 Rth と全く同じ値(RN = Rth)になります。
2. ノートン等価回路への変換手順(求め方)
ある複雑な回路をノートン等価回路に変換する場合、以下の2ステップでパラメータを求めます。
ステップ 1:短絡電流 IN の算出
目的の2端子(A-B)の間を導線で短絡(ショート)します。
その短絡した導線に流れる電流を、キルヒホッフの法則や重ね合わせの理などを用いて計算します。これが となります。
ステップ 2:等価抵抗 RN の算出
回路内のすべての独立電圧源を「短絡(0V)」、独立電流源を「開放(0A)」にします。(※制御電源/依存電源はそのまま残します)
端子A-Bから回路側を見たときの合成抵抗を計算します。これが RN となります。
3. テブナンの定理との関係(相互変換)
ノートン等価回路とテブナン等価回路は、「電源変換(Source Transformation)」の原理によって、互いに簡単に変換することができます。どちらを用いても外部回路(負荷)に対する応答は完全に一致します。
変換公式はオームの法則そのものです。
テブナン等価回路: 理想電圧源 Vth と抵抗 Rth が直列(電圧ベースの解析、開放電圧が扱いやすい場合に有利)
ノートン等価回路: 理想電流源 IN と抵抗 RN が並列(電流ベースの解析、ノード解析や並列に素子がぶら下がる回路で有利)
4. なぜノートン等価回路を使うのか?(メリット)
回路の簡素化:
どれだけ複雑なLSIの内部回路や電源網であっても、注目しているポートから見れば「1つの電流源と1つのインピーダンス」に落とし込めるため、システム全体のシミュレーション(SPICEなど)が劇的に高速化します。
並列接続の解析が容易:
複数の回路ブロックや負荷が並列に接続される場合、電流源同士は足し算(Itotal = I1 + I2 + ・・・)、アドミタンス(抵抗の逆数 )同士も足し算で合成できるため、数式での取り扱いが非常に楽になります。
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