4ポート磁気結合コンバータ(マルチアクティブブリッジ:MAB)において、ZVS(ゼロ電圧スイッチング)を達成・維持することは、高効率化とノイズ低減の鍵となります。
ZVSを維持するための制約条件は、主に「電圧比(電圧不整合)」と「位相差(転流電流)」の相関によって決まります。
1. ZVSの基本原理と条件
ZVSを成立させるには、スイッチがオンになる前に、トランスのリーケージインダクタンスに蓄えられたエネルギーによって、スイッチ(MOSFET/IGBT)の寄生容量を放電し、反転側のダイオードを導通させる必要があります。
必要なエネルギーの条件
各ブリッジのスイッチング時点において、インダクタ電流 が以下の条件を満たす必要があります。
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(Cossはスイッチの出力容量、Vはポート電圧)
つまり、「スイッチングの瞬間に、寄生容量を空にするのに十分な電流が流れていること」が絶対条件です。
2. 位相差 Φ に関する制約条件(SPS制御の場合)
2ポート間の伝送を基準に考えると、ポート とポート j の電圧比を k = Vi / Vj と定義した場合、ZVSを維持するための位相差 Φij には以下の制約が生じます。
① 電圧が整合している場合 (k = 1)
全負荷域でZVSが可能: 位相差Φ がわずかでもあれば、転流に必要な電流が確保しやすくなります。
② 電圧が不整合な場合 (k ≠ 1)
電圧比が1から離れる(昇圧または降圧比が大きい)ほど、ZVSを維持できる位相差の範囲が狭まります。
低負荷(Φ が小さい)時: インダクタ電流のピーク値が低くなり、寄生容量を放電しきれなくなるため、ZVSに失敗しハードスイッチングに移行します。
制約式(目安):
ポート i でZVSを維持するためには、おおよそ以下の位相差が必要です。

※ k > 1(昇圧側)の場合。逆に の場合は、もう一方のポートで制約が厳しくなります。
3. 4ポート特有の課題と対策
4ポートコンバータでは、あるポートの位相差を変えると、磁気結合を介して全ポートの電流波形が変化します。これにより、特定のポートではZVSができても、別のポートでハードスイッチングが発生するという複雑な状況が起こります。
ZVS範囲を広げるための高度な位相制御
単純な位相差(SPS)では低負荷時に効率が落ちるため、以下の手法が取られます。
EPS (Extended Phase Shift) / DPS (Dual Phase Shift):
ブリッジ内部の上下アーム間にも位相差(デューティ比の変更に相当)を設けます。これにより、電流波形を台形や三角形に制御し、低負荷でもスイッチング時に必要な電流値を強制的に確保します。
循環電流の最適化:
4つのポート全体の位相角ベクトルを調整し、トランス内の無効電力を最小化しつつ、全スイッチでのZVS条件を満たす「最適解」をリアルタイムで計算します。
4. ZVS維持のための設計チェックリスト
デッドタイムの最適化: 位相差が十分でも、デッドタイムが短すぎると放電が完了せず、長すぎると寄生ダイオードの導通損失が増えます。
インダクタンス値 () の選定: が大きすぎると が下がりZVSが困難になり、小さすぎると電流リップルが増大します。
最小負荷の設定: 非常に軽い負荷ではZVSは物理的に困難なため、バーストモード(間欠運転)への切り替えを検討します。
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