これまでのGaN(窒化ガリウム)パワーデバイスの多くは、基板表面に対して横方向に電流を流す「横型(HEMT構造)」でしたが、さらなる高耐圧・大電流化、そして信頼性の向上を目的として「縦型GaN」の研究開発と実用化が加速しています。
縦型GaNは、SiC(シリコンカーバイド)と同様に、チップの表面から裏面に向かって垂直に電流を流す構造を持っています。
1. 横型(HEMT)との構造的な違い
特徴 | 横型 GaN (HEMT) | 縦型 GaN |
電流経路 | 基板表面の薄い層(2DEG)を横に流れる | チップの表面から裏面へ垂直に流れる |
主な基板 | Si (Silicon) や Sapphire, SiC | GaN自立基板 (GaN on GaN) |
耐圧 | 600V〜900Vが一般的(横幅に依存) | 1200V〜3300V超(厚みに依存) |
放熱性 | 表面に熱が集中しやすい | チップ全体で放熱できるため有利 |
チップ面積 | 高耐圧化すると面積が急激に増大 | 高耐圧化しても面積を小さく抑えられる |
2. 縦型GaNの圧倒的なメリット
高耐圧と小型化の両立:
横型では高耐圧にするために電極間の距離(横幅)を広げる必要がありますが、縦型はドリフト層の厚みを変えるだけで耐圧を制御できます。これにより、1200Vクラス以上でも極めて小さなチップサイズを実現可能です。
高い信頼性と「ノーマリーオフ」:
縦型構造では、パワーエレクトロニクスで強く求められる「ゲート電圧0Vでオフ」の状態(ノーマリーオフ)を実現しやすく、破壊耐量(アバランシェ耐量)も横型より高い傾向にあります。
電流密度の向上:
チップ表面全体を電極として活用できるため、大電流を流す用途に向いており、電気自動車(EV)のインバータなどに適しています。
3. 実用化に向けた課題:GaN自立基板
縦型GaNを実現するためには、結晶欠陥の極めて少ないGaN自立基板(GaN on GaN)が必要です。
コスト: 従来のSi基板に比べてGaN自立基板は非常に高価です。
大口径化: 現在は2インチ〜4インチが主流で、SiCのように6インチ、8インチへと大口径化・量産化を進める技術開発が急がれています。
4. 主なアプリケーション
縦型GaNは、従来の横型GaNが得意とする「ACアダプタ(数十〜数百W)」の領域を超え、より高い電圧と電力を扱う分野での活用が期待されています。
電気自動車 (EV) / ハイブリッド車:
オンボードチャージャー (OBC) や、メイン駆動インバータのさらなる高効率化・小型化。
データセンター / サーバー用電源:
さらなる高密度化が求められるAIサーバー用電源ユニット。
産業機器・電力インフラ:
太陽光発電のパワーコンディショナや、高電圧のモーター駆動回路。
まとめ
現在の主流は横型GaN(安価なSi基板を利用可能)ですが、縦型GaNは次世代の「真の本命」として、特に1200V以上の高耐圧市場においてSiCの強力なライバルになると目されています。日本国内でも大学や大手デバイスメーカーによる基板の低コスト化技術の研究が非常に活発です。
これまでのフライバックICのような用途から、さらに上のパワーレンジ(数kW〜)を支える技術と言えます。
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