スイッチング電源,SMPS (Switched-Mode Power Supply)において、ノイズが発生するタイミングを特定することは、対策(スナバーの調整やレイアウト変更)の方向性を決める極めて重要なステップです。
主に「ターンオン(ONになる瞬間)」と「ターンオフ(OFFになる瞬間)」では、ノイズの発生原因と現れ方が異なります。
1. ターンオフ(OFF時)のノイズ
スイッチング素子が遮断される瞬間のノイズです。多くの場合、こちらの方がエネルギーが大きく問題になりやすい傾向があります。
原因: 回路の寄生インダクタンス(配線やトランスの漏れインダクタンス)に蓄えられたエネルギーが、行き場を失って急激な電圧スパイク V = L ・ (di/dt) を発生させるためです。
波形の特徴: スイッチング直後に大きな電圧の跳ね上がり(サージ)が見られ、その後に減衰振動(リンギング)が続きます。
主な対策:
CRスナバー / RCDスナバー: 電圧スパイクをクランプし、リンギングを抑制します。
ゲート抵抗の調整: オフ側のゲート抵抗を大きくして、遮断速度をわずかに遅くする(di/dt を小さくする)ことで、サージ自体を抑制します。
2. ターンオン(ON時)のノイズ
スイッチング素子が導通する瞬間のノイズです。
原因:
ダイオードの逆回復電流 (trr): 出力側の整流ダイオードが完全にオフになるまでの間、一瞬だけ逆方向に電流が流れます。これが大きな電流スパイクとなり、ノイズを誘発します。
寄生容量の放電: スイッチ素子の寄生容量(Coss)に蓄えられていた電荷が、ONした瞬間にスイッチを介して一気に接地(GND)へ放電されます。
波形の特徴: 電流波形に鋭いスパイクが見られます。また、放射ノイズとして高い周波数成分(数百MHz帯)に出やすいのが特徴です。
主な対策:
高速リカバリダイオード (FRD) / SBDへの変更: trr の短い部品を選定します。
ゲート抵抗の調整: オン側のゲート抵抗を大きくして、立ち上がりをなだらかにします。
3. どちらのタイミングかを見極める方法
実機評価において、オシロスコープで以下の点を確認します。
① トリガーと拡大
スイッチングの立ち上がり(ON)と立ち下がり(OFF)をそれぞれ拡大し、どちらのタイミングで激しいリンギングやオーバーシュートが発生しているかを確認します。
② 電圧 vs 電流
電圧 (VDS) に大きなスパイクが出ていれば、主に OFF時 のインダクタンス成分が原因です。
電流 (ID) に鋭いスパイクが出ていれば、主に ON時 のダイオードのリカバリや容量放電が原因です。
③ 周波数解析(FFT)
数MHz〜数十MHz: トランスや配線の L と C によるリンギング(主にOFF時)。
100MHz以上: ダイオードのリカバリや、極めて小さな寄生インダクタンスによる微細な共振(主にON時)。
エンジニアの実務的なアドバイス
iNARTEなどのEMC対策や現場のデバッグでは、「ノイズの周波数」から逆算する手法も有効です。
例えば、放射エミッション試験で特定の高い周波数がNGな場合、それはON時のダイオードのリカバリ特性に起因していることが多いため、スナバーをいじるよりもダイオードをより高速なもの(またはSiC-SBDなど)に変える方が劇的に改善することがあります。
現在のデバッグで、特定の周波数帯のノイズに苦戦されている、あるいは特定の波形挙動が見られるといった状況はありますか?
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