絶縁型Y-Δ SR-SABにおいて、ソフトスイッチング(ZVS: ゼロ電圧スイッチング、ZCS: ゼロ電流スイッチング)を成立させるには、「共振タンクのインピーダンス特性」と「スイッチング周波数 と共振周波数 の関係」を適切に設計する必要があります。
特に急速充電器のような大電力用途では、スイッチング損失をゼロに近づけることが熱設計の成否を分けます。
1. ZVS(Zero Voltage Switching)の成立条件
一次側のインバータスイッチ(MOSFET/IGBT)を保護し、ターンオン損失を抑えるための条件です。
遅れ位相(誘導性)領域での動作:
スイッチング周波数 fsw を共振周波数 fr よりも高く設定します(fsw > fr)。回路が誘導性(インダクタンス支配的)に見えるとき、電流の位相が電圧に対して遅れます。
デッドタイム中の放電:
スイッチがオフになった際、回路内のエネルギー(漏れインダクタンスに蓄えられた電流)が、次に対向するスイッチの並列容量(寄生容量)を放電し、ボディダイオードを導通させる必要があります。この「ダイオードが導通している間」にメインスイッチをオンにすることで、電位差ゼロでのターンオン(ZVS)が実現します。
励磁電流の確保:
トランスの励磁インダクタンス Lm が小さすぎず、かつ大きすぎない絶妙な値であることで、軽負荷時でもZVSを維持するための十分な電流を確保します。
2. ZCS(Zero Current Switching)の成立条件
主に二次側の整流素子(ダイオードやSR-MOSFET)や、ターンオフ時の損失を抑えるための条件です。
進み位相(容量性)領域での動作:
逆に fsw < fr で動作させる場合、電流が電圧より先にゼロを通過します。電流が自然にゼロになったタイミングでスイッチを切るため、ターンオフ損失が最小化されます。
不連続モード(DCM)の利用:
SAB方式において、共振電流が半周期以内にゼロまで戻りきるような設計にすると、二次側のダイオードが逆回復特性(リカバリ電流)による損失を起こさずに自然にオフになります。
3. SR-SABにおける「ZVS/ZCSのトレードオフ」
SR-SAB(Series Resonant)では、一般的に以下のバランスで設計されます。
項目 | ZVS(一次側) | ZCS(二次側/SR) |
主なメリット | スイッチの熱破壊を防止。高周波化が可能。 | ダイオードのリカバリ損失とノイズの抑制。 |
設計の鍵 | fsw を fr よりわずかに高く維持する。 | 電流波形がゼロクロスするタイミングでSRをOFF。 |
急速充電での重要性 | 極めて高い。 大電力時はターンオン損失が支配的。 | 高い。 大電流時の導通損とノイズを減らすため。 |
4. 三相Y-Δ結線特有の挙動
三相構成の場合、各相が$120°ずつずれて動作するため、「他相の転流動作」が自相のZVS条件に影響を与えます。
Y-Δ結線による30°の位相差は、一次側から見たインピーダンスを複雑にしますが、適切にデッドタイムを調整することで、単相よりも広い負荷範囲でソフトスイッチングを維持しやすいというメリットがあります。
実務上のポイント: 急速充電器では、バッテリー電圧(出力電圧)が大きく変動します。このため、どの電圧範囲でもZVSを外さないよう、可変周波数制御(PFM)を用いて常に誘導性領域をキープする制御が一般的です。
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