PAM3(Pulse Amplitude Modulation 3-level)は、Thunderbolt 5やUSB4 Version 2.0で採用された最新の信号伝送方式です。
従来の高速通信で使われていた方式と比較して、なぜPAM3が選ばれたのか、その仕組みとメリットを解説します。
1. PAM3の仕組み:3つのレベルで情報を送る
これまでの主流だったNRZ(Non-Return to Zero)方式は、1回の転送(1シンボル)で「0」か「1」の2つの電圧レベルしか使いませんでした。
対してPAM3は、電圧を3つの段階(例:-1, 0, +1)に分けることで、1回の転送で1.58ビット()の情報を送ることができます。
方式 | 電圧レベル数 | 1回で送れる情報量 | 主な採用規格 |
NRZ (PAM2) | 2段階 | 1ビット | Thunderbolt 4, PCIe 5.0 |
PAM3 | 3段階 | 1.58ビット | Thunderbolt 5, USB4 v2 |
PAM4 | 4段階 | 2ビット | PCIe 6.0, 400G Ethernet |
2. なぜPAM4ではなく「PAM3」なのか?
技術的には1回で2ビット送れるPAM4の方が効率的に見えますが、Thunderbolt 5のようなコンシューマー向けケーブル通信ではPAM3が絶妙なバランスを実現しています。
S/N比(信号対雑音比)の確保:
電圧レベルを増やすほど(PAM4など)、隣り合うレベル間の電圧差が小さくなり、ノイズに弱くなります。PAM3はPAM4よりも電圧の間隔が広いため、ノイズ耐性が高く、安価なケーブルでも安定して高速通信が可能です。
帯域効率とコストの妥協点:
PAM3を採用することで、物理的な信号の周波数(ボーレート)を劇的に上げることなく、Thunderbolt 4の2倍の帯域幅(80Gbps)を達成しています。これにより、既存の基板素材や製造プロセスを維持しつつ、性能だけを引き上げることができます。
3. PAM3がもたらすメリット
最大120Gbpsへの道:
PAM3によって基本の双方向帯域が80Gbpsに向上しました。さらに、非対称モード(送信3:受信1)を使うことで、片方向で最大120Gbpsという超広帯域を実現しています。
発熱と電力消費の抑制:
周波数を極端に高くせずに済むため、チップやケーブルの発熱を抑えられます。これは、薄型のノートPCやドッキングステーションにおいて非常に重要なポイントです。
既存ケーブル技術の活用:
信号の複雑さは増していますが、要求される周波数特性が抑えられているため、Thunderbolt 4世代に近い設計のケーブルでも対応が可能になります。
まとめ
PAM3は、「ノイズへの強さ」と「データ転送効率」を両立させるための賢い選択です。Thunderbolt 5が「最大120Gbps」という驚異的な速度を安定して出せるのは、この3値信号への切り替えが大きな鍵となっています。
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