波形面積比較(Area Comparison)とは
~波形の“囲まれた面積”を用いて異常検出を行う判定手法~
■ 定義
波形面積比較(Area Comparison)とは、インパルス巻線試験などで取得される応答波形の下側または全体の“面積(積分値)”を数値化し、基準波形との面積差から異常の有無を判定する方法です。
この手法は特に波形の形状やタイミングには影響されにくく、振幅や減衰の変化を直感的かつ定量的に検出できるため、量産ラインでのNGスクリーニングに広く採用されています。
■ 比較の基本原理
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良品(マスター波形)と検査対象品の応答波形をそれぞれ積分処理
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積分値(波形下の面積)を数値比較
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設定されたしきい値を超える差分がある場合、NGと判定
ΔA=∣Atest−Amaster∣\Delta A = \left| A_{\text{test}} - A_{\text{master}} \right|
■ 面積比較が有効な異常例
異常 | 面積変化の傾向 |
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✅ 巻線間ショート | 減衰が早まり、面積が小さくなる |
✅ 層間絶縁劣化 | 波形変形による部分的面積増加または減少 |
✅ ターン数ミス(巻数違い) | 共振周波数変化 → 面積のずれ |
■ メリット
項目 | 内容 |
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✅ 高速かつ安定 | 単純な数値比較のため自動判定に最適 |
✅ 微細な変化に強い | 高速オシロでは視認しにくい波形歪みも面積で捉えやすい |
✅ 位相ズレやノイズに影響されにくい | 形状比較よりも頑健性が高い |
✅ しきい値設定が容易 | 統計的に良品面積の範囲を定義するだけで運用可能 |
■ 活用例
分野 | 用途 |
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✅ トランス・コイルの出荷検査 | 層間短絡や巻線誤差の自動スクリーニング |
✅ EV車載モーター | 高信頼性を求められる絶縁性能の最終チェック |
✅ 自動化ライン | 面積比較アルゴリズムによるOK/NG分類 |
■ T&Mの対応例
製品名 | 特長 |
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インパルス巻線試験機(TECHMIZE社/他) | 面積比較+マスター波形記録+相関係数法に対応 |
自動波形判定ソフト | 波形面積・相関・周波数・AIによる複合比較ロジック |
測定レポート機能 | 波形・面積値・判定結果を自動記録し品質保証に活用可 |
■ まとめ
項目 | 内容 |
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定義 | 応答波形の面積(積分値)を比較し、良否を判定する手法 |
利点 | 高速・高感度・ノイズ耐性が高く、自動化に適する |
適用製品 | トランス、コイル、モーターなど巻線部品全般 |
T&M提案 | 面積比較機能付きインパルス試験装置・判定ソフト一式を提供 |
T&Mコーポレーションでは、面積比較を含む多次元波形解析機能を搭載した巻線試験ソリューションを各種ご用意しております。自動化ライン導入や品質トレーサビリティ強化に向けた支援も行っておりますので、お気軽にご相談ください。