Ceyear社 ベクトル信号発生器 型式:1466P-V(6kHz to 110GHz)

 

「安定性の高いModCodに切り替わる」とは、通信環境が悪化し、電波の品質(信号対雑音比)が低下した際に、通信の途絶やデータエラーを防ぐために、システムが自動的に通信速度を落とすように符号化(Coding)変調(Modulation)の組み合わせ(ModCod)を変更することです。

これは、アダプティブ・コーディング・変調(ACM)という技術の中核的な動作です。

**「ModCod(モドコド)」


 

安定性の高いModCodの特徴

 

安定性が高いModCodは、通信速度(スループット)は低くなりますが、データがノイズや減衰によって破損するのを防ぐ力が強くなります。具体的には、以下の特徴を持った方式に切り替わります。

 

1. 低次変調(QPSKなど)への切り替え

 

  • 「変調」は、1回の電波の波で運べる情報量(ビット数)を決定します。

  • 高次変調(例:64APSK)は一度に多くのビットを運べますが、電波の品質が少しでも乱れると、受信機が「1」と「0」を間違えやすくなります(ノイズに弱い)。

  • 低次変調(例:QPSK)は一度に運べるビット数は少ないですが、信号間の距離が大きいため、多少ノイズが乗っても「1」と「0」を正確に判別しやすく、安定性が高いです。

 

2. 低い符号化率(Coding Rate)への切り替え

 

  • 「符号化」は、データに誤り訂正用の冗長な情報(パリティ)を付加する割合です。

  • 高い符号化率(例:8/9)は、付加する冗長情報が少ないため、高速ですが、エラーが発生した際の復元能力が低いです。

  • 低い符号化率(例:1/2)は、元のデータ量に対して多くの冗長情報を付加するため、通信速度は落ちますが、多くのエラーを訂正でき、非常に安定します

 

まとめ

 

つまり、「安定性の高いModCod」とは、「低次変調+低い符号化率」の組み合わせであり、「速度を犠牲にしてでも、データの到達を確実にする」ための設定と言えます。


 

切り替わるメカニズム

 

  1. 環境の監視: 受信機(衛星通信では地上のVSAT端末など)が、常に受信した信号の品質、特に(信号対雑音比)を測定します。

  2. フィードバック: 受信機はその測定結果を送信機(衛星やハブ局)にフィードバックします。

  3. 自動切替: 送信機は、SNRが特定の閾値を下回った場合、データエラーを避けるために自動的に低速かつ高安定なModCod(例: 64APSKからQPSKへ)に切り替えて送信を開始します。

このリアルタイムな切り替えによって、Vバンドのような降雨減衰の影響を受けやすい周波数帯でも、悪天候時に通信の途絶を防ぐことが可能になります。

 

T&MコーポレーションではNEXTEM社と協調してSIGLENT社/Ceyear社の電子計測器(スペアナ、VSG、VNA)によるミリ波通信の評価に必要なシステムの提案を行っております。お気軽にお問い合わせフォームよりご相談くださいませ。http://tm-co.co.jp/contact/

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