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IRDS (International Roadmap for Devices and Systems) ロードマップは、半導体業界の将来の技術動向と研究開発の方向性を示すための国際的な指針です。

これは、かつて半導体の微細化の指標とされてきたムーアの法則に基づいたITRS (International Technology Roadmap for Semiconductors) の後継として、2016年に発足しました。


 

1. IRDSロードマップの概要と目的

 

 

目的

 

IRDSは、半導体デバイスやシステムの技術革新を促進し、研究開発コミュニティ、政府機関、および企業が将来の技術課題に取り組むための共通の目標と方向性を提供することを目指しています。

 

ITRSからの変化

 

従来のITRS は、主にCMOS 微細化(トランジスタの縮小)に焦点を当てていましたが、微細化の物理的限界が見え始めたことから、IRDSはより広範な領域をカバーしています。

IRDSのロードマップは、単に「トランジスタをどこまで小さくするか」だけでなく、システムレベルでの課題解決や、新しいコンピューティングパラダイムを含んでいます。


 

2. IRDSの主要な焦点分野

 

IRDSは、技術革新の方向性を以下の複数の分野(フォーカスエリア)に分けてロードマップを作成しています。

  1. More Moore (ムーアの法則の継続):

    • 極端紫外線 (EUV) リソグラフィや新しいトランジスタ構造(Gate-All-Around: GAA、CFETなど)といった微細加工技術の限界を押し広げ、ムーアの法則のペースを維持するための技術です。

  2. More than Moore (ムーアの法則を超えて):

    • 集積化と統合: 異なる種類のデバイスや機能を単一のパッケージやチップに統合する技術(3D集積、異種集積など)。

    • 新しい機能: センサー、アクチュエータ、パワーエレクトロニクスなどの分野での非論理デバイスの開発。

  3. Beyond CMOS (CMOSの次):

    • 現在のCMOS技術の限界を超え、エネルギー効率や性能を飛躍的に向上させるための新しいコンピューティングパラダイム。具体的には、量子コンピューティング、ニューロモーフィックコンピューティング(脳型計算)、スピンエレクトロニクスなどが含まれます。

  4. System and Architecture (システムとアーキテクチャ):

    • データトラフィックの急増に対応するためのメモリ技術(HBMなど)や、高性能コンピューティング、エッジコンピューティングにおける電力効率の高いシステム設計の課題。


 

3. ロードマップの重要性と影響

 

  • 指針の提供: 研究機関や大学は、このロードマップに示された技術課題を解決するために研究テーマを設定します。

  • 国際標準化: 業界全体の用語や目標を統一し、国際的な共同開発やサプライチェーンの構築を円滑にします。

  • 将来予測: IRDS は、CMOS微細化が物理的な限界に達する時期を予測し、業界に次なる大きな技術変革(例えば 2024年頃に CMOS 微細化が終焉を迎えるという予測など)への準備を促しています。