🌐 RDMA (Remote Direct Memory Access) 通信の解説
RDMA (Remote Direct Memory Access) 通信は、ネットワーク経由でデータを転送する際に、CPUを介さずに、あるホスト(サーバー)のメモリから直接別のホストのメモリへアクセスし、データを転送する技術です。
この技術は、特にAI/HPC(高性能コンピューティング) や大規模データセンターにおいて、CPU負荷を劇的に軽減し、超低遅延かつ高スループットなデータ転送を実現するために不可欠な要素となっています。
🚀 RDMAの仕組みと従来のI/Oとの違い
1. 従来のネットワーク I/O (非RDMA)
従来の標準的なデータ転送(例:TCP/IPソケット通信)では、データ転送処理においてCPUが複数のコピー操作に関与します。
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アプリケーションがデータを送信バッファに書き込む。
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OSカーネルがデータをバッファからネットワークカード(NIC)のバッファにコピーする。
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NICがネットワークにデータを送信する。
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受信側でNICがデータを受信バッファにコピーする。
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OSカーネルがデータをアプリケーションのバッファにコピーする。
これらのカーネルとCPUの関与が、遅延(レイテンシ)とCPUオーバーヘッドの主な原因となります。
2. RDMAの仕組み(ゼロコピー)
RDMAは、ネットワークインターフェースカード(NIC)自体に転送ロジックを持たせることで、CPUとOSカーネルを介さずにメモリ間で直接データを転送します(ゼロコピー)。
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送信側のアプリケーションが、転送したいデータのメモリ領域を登録(レジスト) し、NICに転送指示を出す。
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NICが直接データをホストメモリから読み出し、ネットワークへ送信する。
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受信側のNICがデータを受信し、CPUやOSを介さずに直接ターゲットメモリ領域に書き込む。
✨ RDMAの主要なメリット
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低遅延 (Low Latency): CPUとカーネルをバイパスするため、ソフトウェアスタック処理に伴う遅延が大幅に削減されます。AI/HPCで求められるミリ秒以下の超低遅延が実現します。
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CPU負荷軽減 (Low CPU Overhead): 転送処理がNIC(RDMA対応NIC、またはRNIC)にオフロードされるため、CPUはデータ転送に関わる必要がなくなり、アプリケーション処理に専念できます。
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高スループット: CPUのボトルネックが解消されるため、ネットワークの物理的な帯域幅(例:400G、800G)を最大限に活用できます。
🌐 RDMAの主な実装技術
RDMAを実現するための主な技術規格には、以下のものがあります。
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Infiniband (IB): RDMAのために設計された、元祖となる高性能ネットワーク規格。HPC分野で広く採用されています。
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RoCE (RDMA over Converged Ethernet): 標準的なイーサネットネットワーク上でRDMAプロトコルを実行するための技術。データセンターでの主流となりつつあります。
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RoCEv2: IP層の上で動作し、ルーティングが可能になったバージョンです。
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iWARP: TCP上でRDMAプロトコルを実行するための技術。
データセンターでは、既存のイーサネットインフラを活用できるRoCEの採用が急速に進んでいます。ただし、RDMAが正常に機能するためには、ネットワークがパケットロスを発生させない(ロスレスである)ことが極めて重要となります(これが前述のiLossless技術が求められる理由です)。
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