TDR測定における「校正(Calibration)」と「デスクー(Deskew)」は、どちらも「測定基準面(Reference Plane)をDUTの入り口に持っていく」ための作業ですが、そのアプローチと精度が大きく異なります。
VNAでTDRを行う場合、基本的にはフル2ポート校正が推奨されますが、状況に応じてdeskew(デスクー)などの手法を使い分ける必要があります。
1. VNAにおける「校正」と「Deskew」の違い
| 手法 | 内容 | 精度 | 特徴 |
| フル2ポート校正 | SOLT(Short/Open/Load/Thru)などの基準片を測定。 | 最高 | 周波数ごとのミスマッチや損失、位相ズレを数学的にすべて補正する。 |
| Port Extension / Deskew | ケーブルの遅延時間(ps)を指定して基準面を電気的に移動させる。 | 中〜低 | 損失(Loss)の補正は行わず、「時間(位置)」のオフセットのみを合わせる。 |
2. Deskew(ポート延長)の役割と限界
TDRにおいてデスクー(Deskew)が必要になるのは、主に**「差動信号(Differential)」**を測定する際です。
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役割: 2本のケーブルの長さ(遅延)が物理的にわずかに異なる場合、時間軸上で波形の立ち上がりタイミングを一致させます。これがズレていると、コモンモード成分が発生し、正確な差動インピーダンスが測れません。
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メリット: 校正キットを接続し直す手間がなく、メニューから数値を入力するだけで「見た目上」の波形位置を合わせられます。
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デメリット: 周波数ドメインでの挿入損失(Insertion Loss)や反射(Return Loss)が補正されないため、高周波(4.5GHz以上など)では波形がなまったり、インピーダンス値に誤差が出たりします。
3. VNA TDRでの推奨フロー:校正+デエベディング
RFSoCの評価や基板上の測定を行っている場合、単純なデスクーよりも以下のステップが確実です。
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同軸端でのフル校正: ケーブルの先端(SMA/3.5mm端)でSOLT校正を行い、測定器としての精度を担保します。
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フィクスチャ除去(De-embedding): ケーブルの先の基板パターンやプローブの特性を、ファイル(.s2p)や回路モデルを使って「数学的に差し引く」作業です。
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最後に微調整(Auto Port Extension): 基板上のオープン端などで「Auto Port Extension」を実行すると、VNAが自動的に位相を計算し、基準面をDUTの直前まで正確に追い込んでくれます。
4. Deskew実行時の注意点
もし手動でデスクー(Port Extension)を行う場合は、以下の点に注意してください。
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速度係数(Velocity Factor): 同軸ケーブル(通常0.66〜0.7程度)と基板配線(FR-4なら0.5程度)では電波の伝搬速度が異なります。長さを「mm」で入力する場合は、この係数を正しく設定しないと、時間軸上の位置が数ミリ〜数センチ単位でズレます。
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「Open」で合わせる: 基準面を合わせたい場所(DUTを実装する前のパッドなど)を「Open」の状態にして、TDR波形がその位置で全反射(インピーダンス無限大)するように調整するのが最も簡単で確実な方法です。
現在取り組まれている数GHzの系では、わずか数mmの配線でも位相に大きな影響を与えます。単純なデスクーで済ませるか、Sパラメータベースのデエベディングまで踏み込むかは、「インピーダンスの絶対値(Ω)」の精度がどこまで必要かで判断してください。
もし「インピーダンスの不連続点(場所)を見つけたいだけ」ならデスクーで十分ですが、「100Ω±5%を確認したい」のであれば、しっかりとした校正とデエベディングが不可欠です。
出典:Google Gemini (Gemini は AI であり、間違えることがあります。)
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