HP 3325A(のちにアジレント/キーサイト)は、1970年代後半(1978年頃)にHewlett-Packard社が発売した、測定器の歴史に名を残す名機「シンセサイザ / ファンクションジェネレータ」です。

この機器を語る上で、先ほど解説した「MultiSynth」や「分数分周(Fractional-N)」の技術がまさに直結してきます。実は、HP 3325A(および先行したHP 3335A)こそが、世界で初めて「Fractional-N(分数分周)PLLシンセサイザ」を実用化して商業搭載した測定器だからです。

 

HP 3325A のスペックと特徴

当時のアナログ発振器(ファンクションジェネレータ)の常識を覆す、極めて高い周波数分解能と安定度を誇っていました。

  • 周波数レンジ:

    • サイン波: 1 μHz ~ 21 MHz

    • スクエア波(矩形波): 1 μHz ~ 11 MHz

    • 三角波・ランプ波: 1 μHz ~ 11 MHz

  • 周波数分解能:

    • 100 kHz 未満では、なんと 1 μHz (0.000001 Hz)ステップ

    • 100 kHz 以上でも 1 mHz ステップという、最大11桁の圧倒的な分解能を持っていました。

  • スイープ機能:

    • 単なるスポット発振だけでなく、指定した範囲を「位相が連続したまま(Phase Continuous)」滑らかにスイープ(周波数走査)できるため、各種フィルタやアンプの周波数特性(ネットワーク解析)の評価に絶大な威力を発揮しました。

 

 

技術的ブレークスルー:元祖「Fractional-N」

Si5351AのMultiSynthはデジタル(CMOSロジック)でこれを処理していますが、1970年代末のHP 3325Aは、微細なアナログ回路と初期のデジタル回路(HP製の独自プロセッサ「Nanoprocessor」など)の泥臭い組み合わせで分数分周を実現していました。

1. シングル・ループでの多桁実現

当時のシンセサイザで高分解能(1mHzステップなど)を作ろうとすると、いくつものPLL回路を複雑にまたがらせる「マルチ・ループ方式」が必要になり、回路規模が巨大(タンスのようなサイズ)で高価格になっていました。

HP 3325Aは、「Fractional-N(分数分周)」を導入することで、最小限のPLLループで11桁という超高分解能を達成し、デスクトップサイズに収めることに成功しました。

2. アナログによるジッタ(スプリアス)相殺

Si5351Aは「⊿Σ変調」でジッタを消していますが、HP 3325Aの時代にはそんな高速なデジタル演算器はありません。

  • 分数分周を行うことで発生する周期的な「位相の進み・遅れ(パルス・スワローによるジッタ)」を先読みします。

  • そのズレの分だけ、PLLの位相比較器(パルスの出口)に対して、内部のアナログ回路から「補正電流(アナログ・アンチ・ジッタ回路)」をリアルタイムに注入して相殺するという、職人芸のようなアナログ技術が使われていました。

ヴィンテージ測定器としてのトリビア:

このアナログ補正(DACによるリニアリティ制御)が経年劣化や調整ズレを起こすと、出力信号の根本に独特の不要輻射(スプリアス・サブハーモニクス)が発生することがあり、オーディオ〜高周波マニアの間で「HP 3325Aのスペクトルの美しさを維持するためのメンテナンス」が今でもフォーラム(EEVblogなど)で熱く語られています。

 

 

現代のSi5351Aとのつながり

技術の系譜として見ると非常に面白い関係にあります。

  • 1978年(HP 3325A): 巨大な基板に、専用のアナログ補正回路とディスクリートの分周ICを並べ、数W〜数十Wの電力を消費して「分数分周」を実現。

  • 現代(Si5351A): わずか数ミリ四方のチップ(内部のMultiSynth)の中に、完全にデジタル化した分数分周器と⊿Σノイズシェーパを凝縮。マイコンからI2Cでコードを送るだけで、HP 3325Aを超える周波数(160MHz)まで数mAの消費電力でパッと出せる。

 

HP 3325Aは、現代のあらゆる通信機器(スマホ、Wi-Fi、そしてSi5351AのようなIC)に内蔵されている「Fractional-N PLL」という革新技術の始祖であり、当時のHP(ヒューレット・パッカード)の圧倒的な技術力を象徴する回路の結晶と言えます。

 

下記資料では「HP3325A Synthesized Signal Sourcewith Function Generator」について詳しく解説されています。

Hewlett-Packard Journal (January 1979) 

https://hparchive.com/Journals/HPJ-1979-01.pdf

 

 

出典:Google Gemini (Gemini は AI であり、間違えることがあります。)

 

 

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