差動伝送路の4ポートSパラメータ(S4P)データをVNA(およびプローブ)を用いて高精度に取得する場合、シングルエンド測定とは異なる差動特有の落とし穴が複数あります。
実務で特にトラブルになりやすいポイントを4つの視点に分けてまとめました。
1. 物理的・電気的な接触とリターンパスの確保
差動信号は「2本一対で相殺するからGNDは不要」と誤解されがちですが、高周波(数GHz以上)になればなるほど、各ラインのローカルリターンパスが重要になります。S4Pデータを取得するにはGNDが必須です。
(差動TDRプローブ2本ではGNDがないためS4Pデータは所得できません。TDTとしてSdd21、Sdd12などの測定に限定されます)
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GSSG(Ground-Signal-Signal-Ground)プローブの選定
差動測定では、2本のシグナルピンの「外側」にGNDピンが配置されたGSSG構造のプローブを使用するのが定石です。基板側のランディングパッドもこれに合わせたピッチで設計されている必要があります。
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プローブのコンタクト(当て方)によるスキュー
2本のシグナルピンが、完全に同時に、同じ圧力で基板のパッドに接触しなければなりません。プローブがわずかに傾いて片方のピンが先にタッチダウンすると、それだけで数ピコ秒の物理的なスキュー(位相ズレ)が発生し、測定結果が歪みます。マイクロスコープで覗きながら、均等にオーバートラベル(押し込み)がかかるよう微調整してください。
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差動測定の定石となるGSSG構造のマイクロプローブ例. ソース: Vinstronics |
2. スキュー(位相ズレ)によるモード変換特性への影響
差動伝送路の評価では、ディファレンシャル信号がどれだけコモンモードに変換されてしまうか(Scd21 や Sdc21 などのモード変換特性)がEMCや信号完全性(SI)の観点から非常に重要です。
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測定系自体のデスクユー(Deskew)
VNAのポートからプローブ先端に至るまでの同軸ケーブルやプローブ内部の電気長にわずかでも差があると、「測定系が原因で発生したモード変換」が、あたかも「伝送路の特性」としてデータに残ってしまいます。
校正時には、各ポート間の位相差を相殺するデスクユー処理、または完全な4ポート校正(Full 4-Port Cal)を徹底してください。
3. 校正(Calibration)平面とディエンベディング
どこまでを「測定系」とし、どこからを「被測定物(DUT)」とするかの境界(校正平面)を明確にする必要があります。
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プローブ先端での直接校正
理想は、ISS(Impedance Standard Substrate:インピーダンス標準基板)と呼ばれる専用の校正用ウェハを使い、プローブの先端でOpen/Short/Load/Thru(SOLT)を引くことです。これにより、プローブ自体の寄生成分(インダクタンス等)まで含めて完全に消去できます。
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ディエンベディング(治具除去)の活用
ISSでの校正が難しい、あるいは基板上の独自の引出し線(ファンアウト)を含めて除去したい場合は、同軸コネクタ端でVNAを校正した後、(Automatic Fixture Removal)やISD(In-Situ De-embedding、AtaiTec社が開発した高精度ディエンベディングツール)などのソフトウェア機能を用いて、プローブおよび先端治具のSパラメータを数学的に差し引く手法が有効です。
4. Touchstone(.s4p)ファイルのポートマッピング(最重要)
測定が成功しても、出力されるS4Pファイルのポートの並び順(トポロジー)がシミュレータ側と一致していないと、差動解析(混合モードSパラメータへの変換)をした際に、反射と通過が入れ替わるなどの大混乱を招きます。
VNAのメーカーや設定、あるいはPLTS(Physical Layer Test System)などのソフトによって、デフォルトのポートマッピングが異なります。主に以下の2パターンのどちらで保存されているかを必ず確認・記録してください。
| トポロジー型 | 入力ペア | 出力ペア | 概要 |
| 標準(インライン)型 | ポート1, ポート3 | ポート2, ポート4 | Keysight等で多い設定。奇数が入力、偶数が出力。 |
| ブロック(隣接)型 | ポート1, ポート2 | ポート3, ポート4 | 一般的な4ポートの概念通り、1&2が左側、3&4が右側。 |
注意: シミュレータ(ADS、MWO、ANSYS HFSS等)にインポートする際は、このポート番号の定義を1対1で正しくアサインし直さないと、グラフ上でのディファレンシャルインピーダンスや差動挿入損失($S_{dd21}$)の値がめちゃくちゃになります。
5. TDR解析(時間領域)を見据えた周波数設定
S4Pデータから後段でTDR(インピーダンスプロファイル)を計算させる場合、VNAの周波数スイープの条件が時間軸のクオリティを左右します。
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最高周波数(fmax)の確保
時間軸での立ち上がり時間(Resolution)は fmax に反比例します。立ち上がり時間の速いデジタル信号(例:PCIe Gen5/6など)を模したTDR波形が欲しい場合、少なくとも 20 GHz 〜 40 GHz 以上の帯域までスイープしてデータを取る必要があります。
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等間隔ステップとDC外挿
TDR(逆フーリエ変換)を綺麗にかけるためには、周波数ステップ(Delta f)を完全に等間隔(Linear Sweep)にする必要があります。また、開始周波数は可能な限り低く(数kHz〜数十kHz)設定しておくと、DC(直流)成分の外挿エラーによるTDR波形のうねり(垂れ下がり)を防げます。
下記資料では「4portVNA校正方法、s4pデータ取得」について詳しく解説されています。
| 【高周波】ネットアナ活用大全!基礎から応用まで徹底解説 | SIGLENT SNA5004A ソース:エンジャー / Engeer チャンネル登録者数 3.82万人 |
キーワード:ISD IEEE_P370 2x-Thru S4P TDR TDT AFR MultiGBASE-T1 H-MTD
出典:Google Gemini (Gemini は AI であり、間違えることがあります。)
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