車載EMIのグローバルベンチマークであるCISPR 25について、設計・評価の実務において極めて重要な「測定のセットアップ」「高電圧(EV)システムへの対応」、そして「近年の第5版(Edition 5)によるアップデート」を中心に、技術的観点から深く掘り下げて解説します。
1. CISPR 25の基本思想と測定の基本構成
CISPR 25の最大の特徴は、「同じ車両内に同居するレシーバー(アンテナ)を守る」という点にあります。そのため、一般的な商用機器のEMC規格(CISPR 11/32など)と比べて、測定配置(グラウンドの取り方やハーネスの引き回し)が非常に厳格に規定されています。
放射エミッション(RE)試験の標準セットアップ
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電波暗室(ALSE:Absorber-Lined Shielded Enclosure)
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床面を除く壁面・天井に電波吸収体(フェライトタイルおよびハイブリッド吸収体)を施工した部屋で行います。環境のバックグラウンドノイズ(環境雑音)は、測定するリミット値より最低6dB以上低いことが要求されます。
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グラウンドプレーン(基準接地基板)
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厚さ0.5mm以上の銅または亜鉛メッキ鋼板などを用い、シールド壁面と低インピーダンスで接続(ボンディング)された長机状の台(高さ900±100mm)を使用します。
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供試品(DUT)とハーネスの配置
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DUTおよびハーネスは、グラウンドプレーンから50mmの高さに絶縁サポート(発泡スチロールなど)を介して浮かせます。
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ハーネスの長さは1700mm(+300/-0mm)と厳格に決められており、この長さ自体が特定の周波数(およそ150MHz前後など)で効率の良いモノポールアンテナとして機能するため、ハーネスからの放射を捉える設計になっています。
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アンテナとハーネスの直線部分の距離は1mに固定されます。
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伝導エミッション(CE)試験:電圧法と電流法
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電圧法(疑似電源回路:AN / LISN)
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電源ラインに $5\mu\text{H}$ または $50\mu\text{H}$ (高電圧系)のAN(Artificial Network)を挿入し、電源インピーダンスを車内環境と同等の $50\Omega$ に安定化させた上で、レシーバーへ伝わるノイズ電圧( $\text{dB}\mu\text{V}$ )を測定します。
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電流法(電流プローブ)
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ハーネスにクランプ式の電流プローブを噛ませ、コモンモードおよびディファレンシャルモードのノイズ電流( $\text{dB}\mu\text{A}$ )を直接測定します。電圧法で見えにくい、ハーネス全体の同相ノイズを捉えるのに有効です。
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2. 第5版(CISPR 25 Ed.5)における重要アップデート
現行の最新ベースである第5版(Edition 5)では、自動車を取り巻く無線通信の高速化・高周波化に対応するための大きな変更が加えられました。
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測定周波数帯域の拡大(最大6GHzへ)
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従来の第4版では上限が2.5GHz(主に4G LTEや初期のBluetooth/Wi-Fi帯まで)でしたが、第5版では5.925GHz(約6GHz)まで正式に拡張されました。これにより、Wi-Fi 5/6、V2X通信(車車間・路車間)、5GHz帯ETCなどの車載レシーバー保護が明確化されています。
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電波暗室(ALSE)の吸収体性能要件の厳格化
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周波数の6GHz拡張に伴い、暗室壁面の吸音材(アブソーバー)の反射特性として「70MHz〜5.925GHzにおいて6dB以上の減衰」が求められるようになりました。これにより、過去に組まれた「壁の下半分や一部にしかハイブリッド吸収体が貼られていない(フェライトタイル剥き出し部分が多い)部分暗室」では新規格を満たせないケースが出ており、暗室の改修や完全ハイブリッド化が必要となっています。
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3. 高電圧システム(EV/HEV)向け試験のポイント
パワーエレキ(インバータ、OBC、DCDCなど)の評価において最も難易度が高いのが、高電圧(HV)専用セットアップです。
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HV-AN(高電圧疑似電源回路)の配置
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低圧(LV:12V/24V)のANに加え、高電圧(DC 400V/800Vクラス)のプラス・マイナス両極にそれぞれ専用のHV-ANを挿入する必要があります。
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結合キャパシタやインダクタの定格が、大電流(数百Aクラス)および高電圧に耐える仕様でなければなりません。
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シールド(Shielded)と非シールド(Unshielded)の識別
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EVの駆動系パワーラインは、アルミダイカストケースや編組シールド線(オレンジ色の高圧ケーブル)で強固にシールドされています。CISPR 25では、このシールドの接地処理(360度グランドボンディング)が測定結果を劇的に変えるため、実車に即した確実なシールド接地治具の選定・作成が不可欠です。
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インバータ駆動用ロードシステム(ダイナモ・モータ)
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インバータ単体ではなく、実負荷(モータを回し、トルクをかけた状態)でスイッチングノイズを測定する必要があります。そのため、電波暗室の床下にダイナモを配置し、非導電性のシャフト(FRP製など)で暗室内のモータと結合させて負荷試験を行います。この駆動軸や軸受から発生する静電気ノイズ(軸電流ノイズ)の排除も実務上の大きな課題となります。
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4. 実務における「CISPR 25」と「OEM規格」の付き合い方
実務上、注意しなければならないのは、「CISPR 25を満たしていれば、すべての自動車メーカー(OEM)に納品できるわけではない」という点です。
CISPR 25はあくまで共通の「測定方法(Method)」と「標準的な限度値(Limits:Class 1〜5)」を定めているに過ぎません。トヨタ(TSC)、日産(NDS)、ホンダ(HES)、あるいは欧州のVW(TL81000)やBMWといった各OEMは、CISPR 25の測定系をベースにしつつ、以下のようなより厳しい独自要求を課してきます。
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リミット値の引き下げ: CISPR 25のClass 5よりもさらに5〜10dB厳しいラインを特定の無線帯域(例:自国のFM帯やキーレスの周波数)に設定する。
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周波数の穴埋め: CISPR 25で定義されていない隙間の周波数帯や、日本独自の高度道路交通システム(ITS)帯域を追加する。
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過渡的なノイズ(バースト)の評価法: 通常の平均値(AV)やピーク(PK)検波だけでなく、特定の準尖頭値(QP)や、独自のタイムドメイン高速測定(FFTステップスキャン)の適用を義務付ける。
そのため、回路設計・基板レイアウト(SiCのゲート駆動回路の $R_g$ 調整、コモンモードチョークコイルやスナバ回路の選定など)段階では、CISPR 25をベンチマークにしつつ、ターゲットとなるOEMの最新規格書に記載されたリミット値をターゲットにマージン設計を行う必要があります。
現在、具体的な部品(インバータ、ECU、高周波センサーなど)のEMI対策において、どの周波数帯(AM/FM帯、あるいはギガヘルツ帯)のノイズ抑制、もしくは特定の測定モード(電圧法・電流法の相関など)でお困りのポイントはありますでしょうか?必要であれば、さらにブレイクダウンした対策技術についても提示可能です。
出典:Google Gemini (Gemini は AI であり、間違えることがあります。)
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