ISD(In-Situ De-embedding)は、米AtaiTec社(Dr. Ching-Chao Huang)が開発した、高周波・シグナルインテグリティ(SI)分野における非常に強力なソフトウェアベースのディエンベディング技術です。
従来のTRL校正や一般的な2x Thru(KeysightのAFRなど)が抱えていた、基板の製造ばらつきに起因する「非因果性(Non-causality)エラー」を根本的に解決できる手法として、現在の高速デジタル・RF基板の評価で事実上の業界標準(IEEE P370等に準拠)となっています。
エンジニアが実務でISDを選ぶ理由とその仕組みについて、技術的なコアを解説します。
1. 従来手法(TRL / AFRなど)の致命的な弱点
従来のTRL(Thru-Reflect-Line)や、標準的な2x Thruを用いたディエンベディング(AFRなど)は、「テストクーポン(校正用の線路)と、実際のDUTが付いている基板の治具(フィクスチャ)部分のインピーダンスが完全に一致している」という大前提に基づいています。
しかし、現実のPCB製造では以下のばらつきが不可避です。
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ガラスクロスの織り目(Fiber Weave Effect)による局所的な誘電率(Dk)の変動
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エッチング精度のばらつきによるライン幅・銅箔厚の変動
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コネクタ(SMA等)のはんだ付けの微妙な違い
このため、テストクーポンと実機のフィクスチャには必ずインピーダンスの不一致(数 $\Omega$ 程度)が生じます。従来手法でこれをそのまま計算(減算)すると、誤差がDUTデータにシワ寄せされ、TDR波形において時間軸のゼロ未満(信号が入力される前)に反射が現れるという、物理的にあり得ない「非因果性(コーザリティの崩れ)」エラーや、Sパラメータの不自然なリプル(うねり)を発生させてしまいます。
2. ISDのコアメカニズム:「インピーダンス補正型」
ISDが「In-Situ(その場で、実際の状態のまま)」と呼ばれる理由は、テストクーポンを直接データから差し引くのではなく、あくまで「初期の参照(Reference)」としてしか使わない点にあります。
【ISDの処理フロー】
[2x Thru クーポン測定データ] ──┐
├─→ 【数値最適化・インピーダンス補正】 ─→ [真のフィクスチャモデル]
[Fixture + DUT 測定データ] ────┘ │
↓
[高精度・因果的なDUTデータ]
① 数値最適化によるインピーダンス自動補正
ISDは「Fixture + DUT」の測定データそのものを解析し、実機側のフィクスチャの実際のインピーダンスや遅延を数値最適化によって逆算(フィッティング)します。クーポンと実機にインピーダンスのズレがあっても、ソフトウェアが「実機側の真のフィクスチャ特性」を推定してモデリングします。
② 因果性(Causality)の強制担保
電磁気学的な因果律(入力の前に出力は出ない)を満たすため、ISDのアルゴリズムは内部でクランプ・クローニッヒの関係(Kramers-Kronig relations)およびヒルベルト変換(Hilbert Transform)をベースにしています。実部の周波数特性から補完して虚部(位相)を正しく計算するため、抽出されたDUTのSパラメータをTDR変換しても、時間ゼロの前に波形が跳ねるようなエラーが一切起きません。
3. 実務におけるISDの圧倒的なメリット
実務の測定・シミュレーション連携(G-and-D: Measurement and Simulation Correlation)において、ISDは以下のような絶大なメリットをもたらします。
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基板の製造コストを大幅に削減できる
TRL校正用の高価な超低損失基板(Rogersなど)や、極めて厳しいエッチング許容差を指定する必要がなくなります。安価なFR4や通常の製造プロセスで作られた基板でも、ソフトウェア側でエラーを相殺して高い再現性を得られます。
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非対称(Asymmetric)なフィクスチャに対応
入力側の引き回し線と出力側の引き回し線が異なる長さや形状であっても、それぞれ個別に最適化してディエンベディングできます(2セットのクーポンを使用)。
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単線クーポンから「差動のクロストーク」を抽出可能
4ポート(差動)測定において、2本のライン間の電磁気的結合(Crosstalk)を、単線のテストクーポンデータから数学的に予測・分離して除去することができます。
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必要なテストクーポンが最小限で済む
TRLでは多数のLine(周波数帯ごとに異なる長さの線路)が必要で基板面積を圧迫しますが、ISDであれば基本的に「1本の2x Thru(または1x Open / 1x Short)」があれば事足ります。
4. どのような場面で使うべきか?
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PCIe Gen5 / Gen6、USB4、112G/224G Ethernet などの超高速デジタルインターフェースの基板評価。
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基板材料の特性評価(Dk, Df 抽出):フィクスチャの寄生成分を完璧に抜かないと、材料本来の損失が正しく計算できないため、ISDの後にAtaiTecのMPXなどのツールを組み合わせて使われます。
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VNA測定データと電磁界シミュレータ(HFSS、ADS等)のプロットがどうしても一致せず、TDRのインピーダンス波形が波打って困っているとき。
補足: ISDは単体の商用ソフトウェアとして販売されているほか、現在では主要なVNAメーカー(Keysight、Rohde & Schwarzなど)のハイエンドSI解析オプションのバックエンドエンジンや連携プラグインとしても採用、あるいは比較対象として扱われています。
下記資料では「In-Situ De-embedding (ISD)」について詳しく解説されています。
https://ataitec.com/products/isd/
キーワード:ISD IEEE_P370 2x-Thru S4P TDR TDT AFR MultiGBASE-T1 H-MTD
出典:Google Gemini (Gemini は AI であり、間違えることがあります。)
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https://www.micsig.com/list/546
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